リアルは俺だけにしてね~Ｙバージョン~ (ページ6)

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直ちゃんと一緒のマンション。

「ここも引っ越さないとな…。」

直ちゃんが住んでいる上の階のボタンをエレベーターの中で見つめた。

一緒のマンションに住んで、部屋の行き来をして、合鍵も貰って…。楽しかったな。

だけど、選んだのは私。
直ちゃんを信じられなくて、信じぬくことを諦めて、自分の中に芽生えた気持ちを尊重してしまった。
直ちゃんは別れたくないって言ってくれた。
少し前だったら、その言葉を信じていたかもしれない。
だけど…。

「契約更新の前に引っ越しをしたいんですが、手続お願いします。」

仕事の合間に不動産屋さんに行き、今のマンションの解約と次の住処の契約をした。
案外とすぐに対応してくれて、引っ越し業者も紹介されて、片づけの方が追い付かないくらいの早いペースで思い出のマンションを去ることになった。

マンションの下についた時にかかってきた電話。

山田「引っ越し終わるまで会わないってホントなの？」

彼からの電話。

私は直ちゃんと別れはしたけれど、ちゃんと何でも終わらせてケジメをつけてからでないと次へ進めないと涼介君に話した。
いつまでも待つつもりでいたから、全然大丈夫と笑ってくれたけど、でも会わないなんて聞いてないって抗議の電話。

「だって、私そんなに器用じゃないから、一個ずつしか進められないもん。」

不服そうに言ってはいたけれど、ちゃんと理解してくれた。

山田「…わかった。じゃあ、引っ越し終わったら、美味しいご飯一緒に作ろうね。」

「…うん。ありがと。」

電話を切ってエレベーターを待っていた私。

直人「…A」

「あ…、直ちゃん。」

引っ越しまで後少しだったのに、私はまた直ちゃんに会ってしまった。

直人「乗る？」

エレベーターに乗り込んだ直ちゃんに聞かれた。

本当は乗るのは気まずかったけど、「乗る」って答えた。

沈黙のエレベーター。

すぐに私の住む階に着いてしまった。

「…じゃあ、ここで。」

いたたまれなくなって、さっさと降りようとした。

直人「ちょっとだけいい？」

「え？」

直人「…ウチに来て貰ってもいい？」

「…あ、うん。」

自分の階ではなく、少し上の階へと行った。

久しぶりの直ちゃんの家。