美しい世界に貴方は1人 (ページ12)

今日:4 hit、昨日:0 hit、合計:69,126 hit

ten ページ12

You Side

ぐっしょりと濡れた感覚がする

結構思いっきりやられちゃった。
ベタベタはしてないから水をかけられたんだろうけどどんな水をかけられたかも分からない。

『廉っ……』

怖い。怖い、怖いよ
助けてよ。なんでいきなり水なんかかけられるの…

きっとYシャツの上になにもきてない私は今シャツが透けてしまってるんだろう。
まぁ、見学の人は私だけだしみんな練習に夢中だから気付かないか。

とりあえずこんなみっともない姿(どんなか知らないけど)でいられない。風邪引いちゃう。
それにまた水かけられるかもしれない。いや、今度は殴られるかもしれない

『っっ……』

ガクガクと脚が震える。

私は今日、初めて真っ暗な視界の中一人で歩く。

・

・

校庭から校舎まではさほど離れていない。
私だってこの校舎に毎日通ってるのだから多少は慣れている。

でも、いつもなら廉が私の手を握ってくれたから、廉が優しく声をかけてくれたから…

今になって不安が押し寄せてくる。

『わっ！』

ずてっ思いっきり転んだ。
こんなとこに段差があったなんて。

てか今どの辺歩いてるの？

昇降口の前あたりだろうけどよくわからない。誰か…誰かここを通ってくれないかな

必死に周りの音を聞き取るも虚しいことに誰も周りにはいない。

仕方ない。もう一度立ち上がって行かなきゃ

今度は足を引きずるように、段差を探るように歩く。

『あっ…』

もう、ダメじゃん、
また転んじゃう。

やだよこんな目。私のこんな目さえなければ…

・

・

「ちょっあぶね！…って君平気？」

ふわりと誰かに支えられた。
廉とは違う香水の甘い香り。

「Aちゃん…だよね？一人でどうし…ってええ！平気！？」

緊張が一気に溶けた気がしてその人の腕にしがみついたまま思いっきり泣いた。

私目見えないのに涙は出るんだなんて変なこと思いながら泣いた。