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『いや、その…私も心変わりしようと思っただけよ。私も過去の行いを反省して…』
「なぜですか?貴女はそのままでも十分素敵なお方でしたのに。」
私が言い終わる前に、割り込んで力強くそう告げるきんとき。余計に顔がぐいっと近づいて、少しでも動けばくっついてしまいそう。
心臓の音がうるさいほどに高鳴っていて、必死に押さえつけた。
『そ、そんなわけないじゃない!』
「そんなわけあります。無理をして変えようとしなくてもいいんですよ?」
どれだけ主張しても意見を曲げないきんとき。吸い込まれそうなほど透き通った蒼に折れてしまいそうになる。
『無理をしているわけじゃないの!…私は大丈夫だし、何ともない。ただ、今までの自分としっかりと向き直そうと思っただけなの。』
「…そこまでおっしゃるのなら、承知しました。ですが、これだけは分かっていてください。」
彼はそう言うと、私の横の壁に手を付き、あと1mm、というところまで近づいた。通称、壁ドンと呼ばれるものである。
「貴女は変わらなくともとても素敵な人です。ですから、気を付けてくださいね。」
爽やかに微笑んだ後、私から離れて人差し指を頬に当ててウインクをする彼。思わず崩れそうになるのを堪えて、姿勢を直す。
「それじゃ、行きましょうか。」
何事もなかったかのようにまた歩き出す彼。私も駆け足で彼を追っていった。
『(ん…?気を付けるって…?)』
…どういうことだろう。別に気を付けることなんてあったか…?
彼は聞かれても何も答えません、という風に早歩きで進み続ける。
気まずい中で聞けるような雰囲気でもなくて、静かに後ろ姿をただじっと見つめることしかできなかった。
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あまね(プロフ) - 待ってます👊 (4月29日 19時) (レス) @page19 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
りる(プロフ) - 一 にのまえさん» あたたかいコメントありがとうございます…!とても嬉しいです!!頑張ります! (2023年4月3日 0時) (レス) id: 36576409aa (このIDを非表示/違反報告)
一 にのまえ - わかりました!待ってますね!大好きな作品なので頑張ってください! (2023年4月1日 10時) (レス) @page19 id: dc34629a9d (このIDを非表示/違反報告)
おみそ - りるさん» いえいえ大丈夫ですよw!そういう対策?ってとっても大事だと思いますしおすし ふざけてすいません (2023年2月14日 19時) (レス) @page19 id: dc34629a9d (このIDを非表示/違反報告)
りる(プロフ) - おみそさん» なんのお知らせもなしにすみません…!最近界隈が荒れてるようなので一時的にpwをかけさせていただいてます! (2023年2月13日 17時) (レス) id: 36576409aa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りる | 作成日時:2022年7月22日 0時