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夢を見ることがある。


懐かしいような、覚えているような、そんな夢。


物心ついた時からいつも見ていて、夢の中の私はすごく大人だった。


私はその夢の中で、いつも笑顔で楽しくて、でもなぜかいつも寂しくて。


夢にいる時はいつもみんな私を頼ってくれた。私を見つけてくれた。私に優しい笑顔を向けてくれた。



「A!」



振り返るとそこには、赤いマフラーを付けてメガネをしている彼がいる。


顔は見えないが、それでも分かる。私が愛してる人。私を愛してくれる人。



『____!』



彼の名前は………



名前は…??



夢というのは残酷だ。
今日もまた、一日がはじま_______。







ジリリリリリリ、ジリリリリリリ、ジリリリリリリ、ジリリガチャッ




実家から持ってきた古い目覚まし時計の音で夢から引き剥がされる。



(また…思い出せない。)



今まで何度も見てきたはずの夢はいつも目覚めた時には思い出せなくなっていた。



(支度、しなきゃ。)



布団から足を出すとまだひんやりとする空気に起きる気が失せる。


一人暮らしを始めてから約1ヶ月。


夢の中の自分と歳が近くなってきているだろう私は、今日から新しい勤め先になる。



(早く慣れるといいけど。)



そんなことを思いながらスーツに身を包み、『行ってきます。』と返っても来ない独り言を言いながら玄関に鍵をかけた。

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作者名:こむぎ | 作成日時:2022年4月10日 20時

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