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「私ね、生まれてから1度も城を出たことが無いの。父上がお前は城の中で勉強していればいいのだって言って、外には出してくれなかった。もちろん言いつけは守ったわ。でも、この部屋の窓から子供たちのはしゃぐ姿や声が聞こえると、とても羨ましかった。私もあんな風に走り回りたいと強く願ったわ。嫁ぐ時くらいじゃないかしら、私が外に出られるのは。」
「ならば、今から外に出よう。」
「え?」
私は仙蔵を見た。
仙蔵は妖艶に微笑んでいた。
「私が連れ去ってやろう。」
仙蔵はそう言うと私を横抱きにして窓から飛び降りた。
「しっかり掴まっていてくれ。」
どんどん城が小さくなっていった。
城のものにバレないか、という不安より、初めて外に出た喜びでいっぱいだった。
「バレないかしら。」
「心配するな。もう夜だ。私たち忍びが得意とする時間だろう?安心しろ。」
私は仙蔵の言葉を聞いて安心し、仙蔵を掴む手をさらにギュッとした。
体にあたる風が気持ちいい。
今まで感じたことの無い風だった。
「ねぇ、どこに行くの?」
「私のとっておきの場所だ。」
仙蔵はそう言うと少しスピードをあげた。
私は楽しくて仕方なかった。
この時が永遠に続けばいいのに。
「ほら着いたぞ。」
仙蔵はそう言うと私をおろした。
目の前には一面に花が咲いていた。
「うわぁ...すごいわ。本当に花畑ってあるのね!」
「好きなだけ走ればいい。」
仙蔵はそう言って私の背中を押した。
私は足に力を入れて大地を蹴った。
楽しい時間はあっという間で
私は再び仙蔵に横抱きにされ、城への帰路についた。
「私、仙蔵といるのとっても楽しいわ。」
「私も楽しいさ。」
あぁ、この人とずっと一緒にいたい。
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作者名:優乃 | 作成日時:2020年12月20日 2時