幸せに:立花仙蔵 ページ5
15年間、城から出たことがなかった。
部屋の中で必要な作法や礼儀を習い
勉学に励み、琴を弾いた。
城下ではしゃぐ子供たちの声が心底羨ましかった。
15の夏
私は嫁ぐ事になった。
隣国のお殿様に嫁ぐらしい。
私の護衛の者達は祝言の準備の為にしばらく私の元を離れた。
その間、忍術学園の生徒が私を守ってくれるそうだ。
守ってくれると言っても彼らは忍びだから、そう関わる事もないと思う。
「A様。しばらく護衛を務めさせていただきます。忍術学園六年い組立花仙蔵と申します。」
私の前に跪く彼は、女性と思うほど綺麗だった。
サラサラで美しい髪は輝いて見えた。
私はこの時、一目惚れしてしまったんだと思う。
私は仙蔵に守ってもらうより、そばで話し相手になってほしかった。
「仙蔵!ちょっといい?」
「はい。如何なさいましたか?」
「敬語はいいって言ってるじゃない。」
「ですが...」
「お願い。私、友達がいないの。少しの間、私の友達になって。」
仙蔵は少し悩んだが、分かったと頷いてくれた。
仙蔵とは朝から晩まで話した。
忍の心得を聞いたり、道具の使い方、数多の術
私にはどれも魅力的だった。
「なぁ、Aの話はしてくれぬのか?」
「え?」
「いつも私ばかり話していてもつまらないだろう?たまにはAの話も聞きたいのだ。」
「わ、私の話といっても何も無いわよ?本当につまらない話しか...」
「それでもいい。聞かせてくれ。」
優しく微笑む仙蔵に私は負け、自分のことを話すことにした。
11人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:優乃 | 作成日時:2020年12月20日 2時