物理。拾捌 ページ20
『ん!これすごく美味しいですね』
「美味いなァ…」
大好物を前にこれまでで一番の穏やかな笑みを浮かべる不死川さん。
笑顔を見てなんだか嬉しくなる。
今の不死川さんのこの表情を知ってるのは、私だけだ。ちょっと優越感。
なにそれ。もう私べた惚れじゃん。
「天野」
『はい?』
呼ばれたのでくる、と横を向く。
次の瞬間、不死川さんの指が私の口元に触れた。
口元に付いていたあんこを掬って、ぺろりと自分の口に入れる。
「がっつき過ぎだろォ」
そう言って今度は不敵に笑う不死川さん。
ぶわあ、と顔に熱が集まる感覚がした。
駄目だ。どうしようもなくカッコよくて、どうしようもなく好き。
でも、そんなこと言えない。だからこのままでこの気持ちには蓋をしなきゃいけない。
明日からは、もう一緒じゃないんだから。
お昼も、夜もゆっくり過ごした。
どうでもいいようなことをたくさん話して、たくさん笑って。
今日もぴったりとくっついた布団に入る。
繋がってるこの手は、明日には離れてるのか。
そう思うと名残惜しくて、ぎゅ、と両手で握る。
「!!」
『最後だからくっつくの、許してください』
そう言うとそっぽを向かれてしまったけど、気にせず私はそのまま目を瞑る。
一週間で、たくさんの好きを知ってしまった。一緒にいるのが当たり前になりかけてしまった。
こんな贅沢な生活をしちゃったら、日常に戻るのが寂しいじゃないか。
不死川さんは21歳で、おはぎが好きで、おはぎを前にすると穏やかに笑う。
ちょっと怖めに見えるけど本当は優しくて、玄弥くん思いのいいお兄ちゃん。
ただの同僚の私の面倒も見てくれて、怪我した時は心配もしてくれた。
離れるのが寂しい。
でも、刻一刻と時間は進むから、今だけでも。
『…おやすみなさい…』
「…おう」
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ナイトウルフ(プロフ) - 最後、、、!一気に読んじゃいました(笑)さねみんイケメン…この話が現実になればいいのにッッッ 素敵な作品をありがとうございます!! (2022年2月13日 1時) (レス) @page28 id: 1bd66c2c15 (このIDを非表示/違反報告)
aya(プロフ) - 夢中になって読みました! 他の柱の物理も読みたいですーーー! (2020年12月3日 0時) (レス) id: 1c30a1e22f (このIDを非表示/違反報告)
闇ちょこ(プロフ) - 番外編のおばみつちゅき(( (2020年7月31日 14時) (レス) id: e0b0a3b941 (このIDを非表示/違反報告)
銀時 - 凄い面白かった!天元が爆笑してるの想像したらめっちゃ笑えてきた! (2020年4月24日 3時) (レス) id: 6c694a1b22 (このIDを非表示/違反報告)
瀬田 - 幸せです (2020年3月24日 22時) (レス) id: 2c549b1da3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:空風まりも | 作成日時:2019年12月14日 20時