57 ページ13
.
「…落とすって、あの落とすですか…？」
「そっ、物理的にじゃなくてね。」
両手で可愛くハートを作り、天使のようにくるくると回った。
それよりも、私はあの無邪気で手毬で遊ぶ女の子を見やった。
「…それにしても、なんでそんなことを？」
「あの子は勘が良い。ちょっとした妖力でもすぐに察知する。
妖かし相手にどれだけ自分の妖力をコントロールできるかするにはちょうどいいと思わない？」
思わない？と言われてもそう思わない。
第一男装しなくたってできるものはできるし。
私はそのことをまず言いたかった。
「…そうですか。で、どうやったらいいんですか？」
「とりあえず近づいて、話しかけて相手がイチコロになるようなことをすればいい。」
私はため息しか出ない。
相手の心を読む妖かしなのに、落とす方法を教えてくれないとはなんぞや。
「…ま、そんなに俺に悪態ついてたら、もっと難易度上げてもいいんだヨ？」
「…これも修行のうちですよね。」
緊張している自分に、大丈夫だと落ち着かせるため胸に手を置く。
ふぅ、と息を吐きそっと影から歩き出した。
余計なことは考えるな。
私は彼女に近づき、落とせばいい。
妖力なんて無駄なことは考えない。
頭を空っぽにしようと私は彼女に近づきかけたとき一度止まる。
気づかない様子の彼女を後ろからでも何かすればある意味落とせる。
けどこれはそんなに甘くない。
「すみません。」
「…！うぇ、い、いつのまに…！」
はねていた手毬を返さずに彼女は驚いた。自然と手毬ははねず地面に転がる。
そして振り返った同時に私は自分を殺す。
「…ここらにいいお嬢さんがいたもので、つい。お嬢さん、名前は？」
「…や、谷地仁花です…、」
谷地仁花、名前は覚えた。
あとは、なにかいい策があればいいのだけれど。
どうも私には才能というものが備わっていないようで。
「…あ、あの…、人間見かけませんでした？すごく匂いがしたので。」
「…ｯ、さ、さぁ？ボクは見てないよ。」
何かに勘づきはじめた谷地さんに私は動揺を隠しきれない。
さすがに気づくのが早すぎだと言いたい。
否、妖力をコントロールしたい。
「…あ、手毬、ハイどうぞ。」
「あ、あざっす…！あのあなたのお名前は？」
私は、天童さんから見えていない角度で前髪をかきあげて微笑む。
「ミカドだ。礼を言うのはこちらの方だ。」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 392人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
油揚げ(プロフ) - めちゃくちゃ楽しかったです！素敵な作品をありがとうございました！！！ (2021年12月19日 22時) (
レス) @page33 id: b66c454432 (このIDを非表示/違反報告)
ちーたん - なるほど！消す直前を見れていなかったので知らなくて申し訳ないです。次の作品も楽しみにしています！ (2018年1月13日 11時) (レス) id: ce5d38f4dd (このIDを非表示/違反報告)
わちゃちゃ(プロフ) - ちーたんさん» あちらにも書きましたが、内容が不謹慎では？と友人からの指摘を受けたこと、受験が終わるまで中途半端にはしたくないこと、この二つから消すことにしました。読んでくださってたのに申し訳ありません…。次はいつになるかわかりませんが、読んでくださると幸いです。 (2018年1月11日 7時) (レス) id: 2b82fe3330 (このIDを非表示/違反報告)
ちーたん - すごく面白かったです！質問なのですが、なぜ新作(？)を消してしまわれたのでしょうか？あっちも最高だったので…。でも、次のやつも楽しみにしています！頑張ってください！ (2018年1月9日 0時) (レス) id: ce5d38f4dd (このIDを非表示/違反報告)
わちゃちゃ(プロフ) - 瑛さん» コメントありがとうございます！終わってしまいましたね…。意味深な終わらせ方をしたのは自分の表現力の無さが生み出した賜物ですね(笑)ありがとうございます！案は浮かんでいるので早めにだそうと思っています。読んでいただきありがとうございました！！ (2017年12月12日 17時) (レス) id: 2b82fe3330 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：わちゃちゃ | 作成日時：2017年11月15日 22時
