こんにちは天国-其の弍-【鬼滅の刃】

42清く正しく勇ましく ページ4

3人で鋼鐵塚さんの後ろ姿を見送る。
陽は高く昇りやや暖かく感じる。
三度笠は森の奥に消えていくまで、一度もこちらを振り返ることは無かった。

『…鱗滝さん』

鱗「…なんだ」

『……なぜ、「カァァ‼竈門炭治郎ォ、A‼」』

Aが鱗滝に話しかけた丁度その時、
炭治郎の鴉が任務の伝令に来た。
鴉に遅れて鷲(通称:鷲子さん)はAの腕に器用に止まった。

『久し振りだね』

よろしくね、と頭を撫でてやると気持ちよさそうにすり寄って来る鷲子さんに、Aは少しだけ頰を緩めた。

鴉「鬼狩リトシテノォ 最初ノ仕事デアル‼…」

鴉は言い終わると急ゲェ 急ゲェと2人を急かした。
　
炭「…少女が、消えている…」

炭治郎は何かを考えるように佇んでいた。

『…準備しよう、炭治郎くん。
…大丈夫だから。』


炭「…そうだな。」




。。。


『(新品の布の匂いだ…)』

更紗をきつく巻き直し真新しい隊服に袖を通した。
ズボンは少しサイズが大きかったのでベルトが付いていて助かった。(隊服は炭治郎と同じデザイン)
この世界にきてからずっと和服ばかりを着ていたので、洋服を着るのは久し振りだ。
やっぱり洋服は和服に比べて動きやすい。


炭「…着替えたか？」

『着替えたよ』



襖を開けるとしっかりと隊服を着る炭治郎がそこにいた。
洋服が体に馴染んでないのか、どことなく着られてる感がしていて少し微笑ましかった。

少しからかってみようかと思ったけど、生憎、私と炭治郎の間の空気はそんな事を許してくれるようなものでは無かった。

鱗滝さんから隊服、禰豆子ちゃんについて説明を受けると、どこから持ってきたのか深い臙脂色をした羽織りをくれた。
色の選び方からして、配慮をしてくれたのだろう。


『鱗滝さん、
短い間でしたがお世話になりました。
ありがとうございました。

行ってきます。』


笑顔でそう言うと鱗滝さんは無言で私の頭を撫でた。
なにも言ってくれなかった代わりに、大きな手を通して鱗滝さんの優しさが伝わってきた。

私がこの世界に来て、まるで不審者だったどこの人かも分からない人間を、鱗滝さんは優しく迎え入れてくれ、いつも私の為を思って厳しく接してくれたその大きな優しさを思っては涙が溢れそうになった。
この世界で肉親のいない私にとって、鱗滝さんはやはり父のような存在だったのかもしれない。


私は何度も振り返り、家の前に立つ鱗滝さんにその姿が見えなくなるまで何度も手を振った。

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