ころころわんこ《N.Y》 (ページ33)

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石川選手を同じコートから見ていて、

やっぱり雲の上の人だと思った。

難しいと思うような高すぎるトスも、

セッターがちょっとミスったトスも

俺には決められないのに、

彼は決めてしまう。

決めるスパイクの音なんて俺らと全く違うし、

”プロ”ってやっぱりすごいと思った。

俺らとは見ている景色も、プレーしてる場所も

全てが違うのだ。

Aにタオルとドリンクを貰いに行けば

彼女も石川選手のプレーに感動しているようだった。

やっぱり俺には手も届かない、とそう思った。

けど彼女は、

”石川選手とプレーしている俺”を見ていたと

言ってくれた。

西田｢……ありがと、Aのお陰で
ちょっとモチベ上がったわ。｣

『いえいえ。…あと、
有志は有志のままでいいからね。
私は、”西田有志”が好きだから。』

彼女は、プロの彼と、俺を一緒には見ていなかった。

…いや、分からない。俺が彼の

足元にも及んでいないから一緒になんて

到底見れなかっただけなのかもしれない。

けど彼女は、迷子の子どもを宥めるように

ふわりと優しく笑った。

きっとAは、実力差とかそういうのを抜いて、

俺を俺として見ていてくれてるんだって、

そう思えた。

.

｢｢ありがとうございました！！｣｣

石川選手が帰るとの事で

俺たち皆で石川選手に挨拶をする。

平松｢今日はこんな田舎の学校にわざわざ
ありがとう。｣

石川｢こちらこそ、飛び入りで参加しちゃって
申し訳ないです。いい経験になりました。｣

平松｢それはよかった。またお暇があれば
どうぞ、お越し下さいね。｣

『有志は、どうでしたか？』

彼女はやんわりと、笑みを浮かべそう問うた。

すると石川選手もにこりと笑った。

｢いい動きしてた。彼は勿論、他の子たちも。
夏の大会、期待してるね。｣

その後、石川選手に連絡先を聞かれて

メッセージアプリで連絡先を交換した。

数日後、テレビで特集を組まれている彼を見て

夢なんじゃないか、なんて何度も頬をつねったのは

正直誰にも言いたくないかな、とか。