１話 ページ3
「いらっしゃいませ」
いつものように作った笑顔をふりまく私。
私の名前は花村A。
至って普通の平凡な大人の女性である。
これと言って秀でた特技もない。
学歴も普通。
そして今はたばこ屋で、日々作った笑顔をふりまいている。
ココは歌舞伎町。
周りの人間だってならず者ばかりの町。
変な人ばかりだ。
例えば現在進行形で目の前にいる人がそうである。
「おい、とにかく３つ寄越せ」
「なんですか、その態度は」
「早くしろ」
「そんな態度の人に売りませんよ」
目の前には銀髪の天然パーマ。
この歌舞伎町で、万事屋をやっている社長さんこと坂田銀時さんである。
「お前の給料なくなるぞ」
「万年金欠の上に、従業員に給料支払わない社長には言われたくないです」
「・・チッ、相変わらず冷てぇな」
「また家賃滞納して、たばこのおつかいですか？いい歳して恥ずかしくないんですか？」
そう言いながらも私は彼がいつも買いに来るたばこを出す。
「仕方ねぇだろ。家賃払えるほどの金がねぇんだから」
「いい加減、ちゃんとしたトコに就職したらどうなんですか」
「ゲッ、あのババア・・ワザと足りないように金渡しやがったな」
ツケといて。と言う彼に私は容赦なく２箱とお釣りを手渡した。
「２箱です。ありがとうございました」
私は再び作り笑顔をふりまく。
彼は不満そうな顔をして言う。
「そんな融通きかねーから、彼氏の一人や二人できねーんだよ」
「私、彼氏出来たことありませんから」
「え・・・処「お登勢さんにセクハラされたと告げ口しますよ」
その言葉に焦ったらしい。
「悪かったって。今度は追い出されるかもしれねーからよー」
でも顔は可愛いんだけどな、なんでいないの？と聞いてくる彼。
別に今まで、好きな人がいなかったわけでもない。
告白された事がなかったわけでもない。
でも、どうしても彼氏ができなかった。
『Aってさー全然表情変わらないよねー』
寺子屋に通っていた頃に言われた言葉。
初めはさっぱりわからなかった。
『付き合ってください！！』
なんて場面もあった。
けどそんな時も表情が変わらないらしい。
相手の人に本当に好きなの？なんて言われる始末。
そんな私は、いつしか�爛泪優�ン�瓩箸△戚召鬚弔韻蕕譴襪茲Δ砲覆辰拭�
ホント・・・黒歴史だ。
私が思い出にはせっていると、彼はいつのまにか消えていた。
たばこを３箱持って・・
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作者名：沖田いずみ | 作成日時：2018年2月13日 10時
