11話 ページ13
すでに時計は15時を過ぎている。
いつもなら14時前にはやって来る土方さんの姿はない。
「なにかあったのかな・・」
いつも来る人が来ないのは少し不安になる。
それに土方さんは真選組。
きっと危ない事だってしてる。
来ないって事は怪我でもしたのだろうか。
それとも風邪を引いてしまったのだろうか。
もしくは・・
「こないだ私が変な態度をとったからかな・・」
あーあと私は目の前の机にうな垂れた。
昔からこんな自分が嫌いだ。
素直に伝えられない自分が。
天邪鬼な自分が。
本当は気づいてる。
話したいだけと言いつつ、自分が土方さんをどう思ってるかなんてわかってる。
「・・・好き」
そんな言葉が口から出た。
「・・好きなんだよな」
「え!!?」
「へっ!?」
いきなり聞こえた驚く声に私は机から顔を離した。
目の前には初めて見る顔だった。
「あ、あの、すみませんんんん!!!」
初対面の人に聞かれてしまったと恥ずかしくなる。
私が謝るべきなのに、目の前の彼が謝っている。
「こ、こちらこそすみません!!」
とにかく私も謝らねばと頭を下げる。
「いえ、俺も悪いんです。声をかけなかったから」
と言う優しい言葉に私はおもいっきり頭を上げた。
「グホッ」
しかしそれを予想していなかった彼に私の頭は攻撃した。
「あわわわわ、す、すみません!!」
「こちらこそすみません!!」
二人でまた謝る。
それがなんだかおかしくて笑ってしまった。
「ふふふ」
心から笑ったのは久しぶりだ。
目の前の彼も笑っている。
「あの・・」
二人で笑い合った後、彼は困った顔をしている。
あ、そうだ。
今彼はお客さんだ。
「あ、いらっしゃいませ」
そう言って笑顔を見せる。
いつもの作り笑顔なんかじゃない。
さっきの笑いが続いていて、作るなんてできなかった。
「どの煙草ですか?」
彼はお客さんで煙草を買いに来たのだ。
しかし彼の口から出たのは
「あの・・副長に頼まれて・・」
副長?
副長って誰だろうと考える。
私が不思議に思っている事に気付いたのだろう。
「あ、副長っていうのは、真選組副長の土方十四郎のことです」
その名前に私はハッとする。
「あ、あ、あ、土方さんの」
そうだ、彼は真選組だった。
副長だったと思い出す。
そうか、彼は私服だけど真選組で、副長である土方さんに頼まれたのだと理解した。
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作者名:沖田いずみ | 作成日時:2018年2月13日 10時