16話 ページ17
男の人には…慣れてるはずだった。
でもあんな近くに来られてキスまでされたら、軍にいたときの記憶が蘇って涙が出てしまい、朝食も食べずに広間を飛び出してしまった。
軍には女性が少なかったから、欲に飢えた男共が私を襲おうとすることだってよくあった。
でもそれももう昔の話、もう大丈夫、もう大丈夫と思い込んでいた。
だけど私の中にはまだ鮮明にあのときの恐怖が記憶に植え付けられていたのだ。
『うぅ…ぐすっ…ひっ…っく…ぅ…』
必死に声を殺し、涙を袖でごしごしと拭う。
コンコンコン
「A、僕だけど…大丈夫?朝食持ってきたよ。食べれる?」
トレイシーだ。朝食を持ってきてくれたらしい。ありがたい…けど今はなるべく人に会いたくなかった。こんなみっともない私、見せたくなかった。
『っ…!あ、ありがとうトレイシー。だけどごめん、朝食は…遠慮しとくよ。』
扉越しに私はそう伝えると、トレイシーは小さく、分かった…いつでも相談してね。と言い広間へと戻っていく。
ごめんね…トレイシー…
そうだ、今日はこの後ゲームがあったんだった…遅れないようにしなければ。
そう思い私はゲームに出る準備をする。
もうさっきみたいなみっともない表情ではない。
私は深呼吸をし、扉を開くと、前には今日のデザートと思われるプリン。
トレイシー…朝食は要らないと言ったはずなんだけど、プリンだけは残しておいてってくれたんだ…
今度しっかりとお礼を伝えなければ。
私はそうしてマッチングルームへと向かう。
扉を押し、中に入るともう既にみんな集まっていた。メンバーはエミリー、イソップさん、ウィリアムくんと私。
イソップさんにはさっきの広間での出来事を近くで見られてしまったから、もしかしたら私のあの涙の浮かんだ顔も見られていたかもしれないという不安がよぎった。
嫌だなぁ…
でも、ゲームに支障をきたすわけにはいかないので、なるべく気にしないようにする。それに、この編成はなかなかバランスがとれてる。勝利するための算段は充分にあった。
ふぅ…と深呼吸をし、一番奥の椅子に座って、私の携帯品であるスナイパーライフルのスコープの確認をする。
ハンターの準備が整ったらしく、パリン、とガラスの割れる音がし、視界が暗転する。
意識が遠のいていく。
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カシューナッツ炒め(プロフ) - うぉううぉう…めっちゃ面白いですね!!続き楽しみにしてます!!ですが嫌われてる要素が少ないと思います!嫌われストーリーという設定や夢主設定等はめちゃめちゃいいのにそれがもったいないと思います!!応援してます! (2021年8月24日 0時) (レス) id: ea7d5bd598 (このIDを非表示/違反報告)
柏木美琴(プロフ) - 小説自体はとても面白いです。だけどイラストが足枷となってしまってかこれ以上読むことが出来ません。ごめんなさい (2021年1月11日 9時) (レス) id: 12d89760b5 (このIDを非表示/違反報告)
柏木美琴(プロフ) - イラストを載せるのはいいと思うんですが、私はイラスト載せられるとイメージがイラストに定着してしまうので見たい人だけ見れるようにして欲しいです。 (2021年1月11日 9時) (レス) id: 12d89760b5 (このIDを非表示/違反報告)
柏木美琴(プロフ) - ウィリアムくんまさかの左右w (2021年1月11日 9時) (レス) id: 12d89760b5 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠いろ(プロフ) - かりんさん» 関係設定を評価してくださるのは本当に嬉しいです!!Twitterフォロー?!もうめちゃくちゃ嬉しいですぅぅ…!!ありがとうございますっ!! (2020年4月17日 20時) (レス) id: c3dcbab85a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:翡翠いろ | 作成日時:2020年3月31日 18時