15話 ページ16
ノートンside
僕は最初、Aさんに対して全くと言っていいほど興味がなかった。自分を犠牲にすることが正しいと思っていて、なんて馬鹿馬鹿しい。
それだけだった。
だから僕はわざと冷たくあしらってきた。
それは、悲しむ顔が見たかったから。
でも、彼女は悲しむどころか、そのような表情を一切顔に出さず、むしろ何も感じていないような顔をしていた。
それに加えて、
まるで僕の姿が彼女の瞳にすら映っていないような気がして、少し苛立っていた。
そして昨夜、広間でナワーブとAさんが話していて、Aさんが何かしらリアクションをしていたのを聞いたとき。
僕は、
胸が少し締め付けられるように痛くなった。
彼女のことを見るのは、僕だけでいいというドス黒く汚い独占欲の矛先は、ナワーブに向いた。
「油断ならないね」
だから僕は今朝、彼女を追い詰め、見つめて、問い詰めたとき、目に涙を浮かべ、こちらを怯えるように見る今にも泣き出しそうな彼女の表情を見たそのとき。
嗚呼、
これだ、
僕が見たかった表情は。
朝食の時間になり僕はトレイを嫌々置きに来たであろう彼女の手を引きバランスを崩してそれを僕がキャッチし、耳元で囁き、頬にキスをした。
案の定Aさんが見せたのは、そこら辺の女子みたいな真っ赤な顔ではなく。
恐ろしいものでも見たかのような真っ青な顔だった。
眉は下がっていて、目には涙を浮かべていたし、声だって震えていた。
そんな表情でも、
僕を見ていたんだ。しっかりと。
その後彼女は逃げるようにして広間を飛び出た。
惜しかったな、と思い朝食に手を付ける。
…視線が痛い、女子たちが僕を睨んでいる。だけど特に凄いのは僕の近くの3人。
「なにっ…してるんですか…!あんなことっ…」
「今のは…何だい…?」
「おい、ノートンお前、何してんだよっ…?!」
ナワーブに至っては僕の胸倉をつかんで立ち上がっている。
今更何なんだ。
「別に、只の気まぐれ。」
そう言い僕は、朝食を食べ終わり、トレイを片付けに行こうとする。
と、
「ちょっ、ノートン、何今の?Aになにしてんの?前まで散々だったくせに。気まぐれでAを困らせないで。」
Aと特に仲の良いレズニックさんに呼び止められ、そう言われる。そして、睨まれてる。
広間中に気まずい雰囲気が漂う。
「ご、ご馳走様!僕ちょっとAのとこに行ってくるね。」
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カシューナッツ炒め(プロフ) - うぉううぉう…めっちゃ面白いですね!!続き楽しみにしてます!!ですが嫌われてる要素が少ないと思います!嫌われストーリーという設定や夢主設定等はめちゃめちゃいいのにそれがもったいないと思います!!応援してます! (2021年8月24日 0時) (レス) id: ea7d5bd598 (このIDを非表示/違反報告)
柏木美琴(プロフ) - 小説自体はとても面白いです。だけどイラストが足枷となってしまってかこれ以上読むことが出来ません。ごめんなさい (2021年1月11日 9時) (レス) id: 12d89760b5 (このIDを非表示/違反報告)
柏木美琴(プロフ) - イラストを載せるのはいいと思うんですが、私はイラスト載せられるとイメージがイラストに定着してしまうので見たい人だけ見れるようにして欲しいです。 (2021年1月11日 9時) (レス) id: 12d89760b5 (このIDを非表示/違反報告)
柏木美琴(プロフ) - ウィリアムくんまさかの左右w (2021年1月11日 9時) (レス) id: 12d89760b5 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠いろ(プロフ) - かりんさん» 関係設定を評価してくださるのは本当に嬉しいです!!Twitterフォロー?!もうめちゃくちゃ嬉しいですぅぅ…!!ありがとうございますっ!! (2020年4月17日 20時) (レス) id: c3dcbab85a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:翡翠いろ | 作成日時:2020年3月31日 18時