決めた ページ12
私の心とは正反対に、眩い光を放つ太陽が上り朝が訪れる。
私は一晩中泣き続けてあることを決意した。
それはここから"逃げる”という事だ。即ち脱走を現す。私がいくら無能とはいえ、まだ曲がりなりにもそれなりの軍、ひいては国家の機密情報を持った幹部の立場。捕まるとその先には恐らく死が待っている。
たとえ進む道が破滅の道だとしても、それでもいいと思った。あの人達にいらないと直接告げられるぐらいなら私はここから逃げることを選ぶ。どうせあの人達がいなきゃこの生に価値など見いだせぬ無能なのだから。だったら真実を告げられる前に逃げて僅かに私の中に残る大切な幸せに浸って縋って生きていくほうがましだ。
自分の命を軽んずるわけではないのだ。ただ追い出されたあと一人寂しく死ぬよりはたとえそれが処刑であろうとも誰かのそばで死にたい、そう思っただけだ。
2日後のちょうど新月の夜、私はここから逃げる。
そう決めて私は立ち上がりカーテンを開ける。薄暗いどんよりとした部屋に光が差し込む。ぐるりと一周部屋を見渡す。
今思えばこの部屋にあるものはみんなが私にくれたものが多い。例えば茶葉とティーセット。これはオスマンさんが秘密のお茶会用にとくれたもの。
私が愛用している万年筆はトントンさん、ガラスペンは鬱先生から。
インクはエーミールさんが私のために買ってきてくれたもの。
ベットに置かれるぬいぐるみは「Aに似とるからつい買ってしもうたわ」と笑うシャオロンさんがくれた。
机の上にあるヘルメットはかつて私をバイクにのせ連れ出してくれていたショッピさんから。
鏡の前に置いてあるヘアピンはゾムさん、装飾のついた綺麗なヘアゴムはコネシマさん。まだ私の髪が長かった頃にくれたもの。
そして今耳についているGPS付きのピアスはロボロさんから。
流石にグルッペンさんが「トン氏にバレずにくつろぐためだゾ」と言ってソファーを持ってきた時は驚いたが。
あっちにもこっちにも思い出ばかり。今思えばここは私にとっての幸せの国だったのだ。
本当は何もかもを捨ててから消えてしまおうと思った。しかしたしかに私がいたという証明が欲しかった。だからこの部屋はこのまま残していこう。
私だけの幸せの国。もうなんの意味もなさないけれどそれでもたしかに私は幸せだったと。
ここと決別するための最後の儀式。無邪気に笑い合うみんなとの写真だけ燃やした。
もう涙は零れなかった。
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もふもふ - 初コメします。今泣きながら読んでます。神作品を産んでくれてありがとうございます。 (2022年11月24日 18時) (
レス) @page12 id: a41408c385 (このIDを非表示/違反報告)
うさ - 水月華さん» すみません。そうだったんですね…。勝手なことをしてすみません。ですが私の端末ではコメを消せないので作者様が消してもらえるといいです。 (2019年11月6日 22時) (レス) id: 95908891b8 (このIDを非表示/違反報告)
水月華(プロフ) - 当作品の中にパスワードについて記載しておりますのでそちらをご確認ください。申し訳ないのですが読みたいと思っている方だけに読んで頂きたいと思っておりますのでそうでない人の目にもとまりやすいコメント欄でパスワードを書くのはやめてください。 (2019年11月6日 8時) (レス) id: fac1d7eb45 (このIDを非表示/違反報告)
うさ - パスワードは1029です。本人様ではなくすみません。ストーリーの中で見つけられず、コメ欄に来た方々にこのコメを見ていただけるとありがたいです。 (2019年11月4日 15時) (レス) id: 95908891b8 (このIDを非表示/違反報告)
案山子 - 凄く面白い作品でした！是非続編が見たいので、パスワードを教えてもらってよろしいでしょうか？ (2019年11月4日 1時) (レス) id: 51ee2da9ff (このIDを非表示/違反報告)
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