・ ページ30
俺の母親は……とある吸血鬼の餌食にされて、死んだ。
母が結婚する前から母の事を狙っていたらしく、結婚したことに逆上してのことだった。
超能力で弱みを握られ、それを口外しない代償として血を毎日提供させられ続けて……
元々体の弱かった母は、俺が三歳の時に、失血症で倒れた。
そんな悲劇を二度と起こさないと母の墓前で誓った父が、この研究所を立てたのだ。
人外、と呼ばれる『特殊生物』を研究し、人間との調和を図るために。
そんな俺は、吸血鬼だけでなく、特殊生物自体がそんなに得意ではない。
でも、父の研究の手助けになれば、母も報われると思って、ここに入ることに決めたのに……
「これじゃ、ただの二の舞じゃないか……」
母を殺した吸血鬼は、嫉妬にまみれて血を求めいたから、通常摂取するよりも多く吸っていたらしいと、研究しているうちに分かってきた。
だから、俺がカズに吸血されることによって、失血症になる心配は無いはずだ。
分かっているのに。
吸血鬼にいたぶられて、不安に押しつぶされそうになりながら、血を提供する――
母と全く同じ道をたどっている俺自身が、情けなくて仕方なかった。
そんな風に絶望を抱えながら、カズの研究をして早三ヶ月がたったある時。
俺の身体に、微かな変化が訪れた。
いつものように、カズが首筋に歯を立てた瞬間、
「……んっ…」
じわん、と感じた違和感。
痛みではないこれは……
――嘘だろ??
「はぁっ……」
俺の頭は、微かな……快感、を捉えてしまったんだ。
そんな体になってしまった事が悔しくて悔しくて、幾らか熱くなっている息を吐いた。
その途端、バッとカズが、身体を離してこっちを見る。
「……どうかしましたか?」
不審そうに眉を顰める彼を見つめたまま、涙が止まらなくなった。
「ちょっ……!?」
明らかに混乱した声が聞こえても、喉から漏れるのはみっともない嗚咽だけ。
悔しい。悲しい。こんなのもう辞めたい。
その時。
ふわっと、首元に温かさを感じた。
さっきまで歯を立てられていた所が、ふにっと柔らかいものに包まれる。
「……そんな急に泣かれても…困りますよ?」
それが彼の唇だって……分かるまでに時間はかからなくて。
恐る恐る俯いていた顔を上げると、珍しく困ったように眉を下げているカズがいた。
その瞳には、ぐしゃぐしゃになった俺が映っていて。
ざあっと全身が熱くなるのを感じた。
ああ、これは……駄目だ。
661人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
大翔(プロフ) - kkさん» 主催の者ではなく、練習曲29番を書かせて頂いただけの私ですが、主催の方がまだ作者さんを続けていらっしゃるのか分からないので、かわりにコメント失礼します。コメントしていただいて本当にありがとうございます! (2020年1月24日 23時) (レス) id: 7ff2e3a340 (このIDを非表示/違反報告)
kk - 素晴らしい作品!全部すごく良かったです。s受け尊し。 (2020年1月24日 23時) (レス) id: c2bfb0fe32 (このIDを非表示/違反報告)
向日葵(プロフ) - Sさん» 突然失礼します、向日葵です。こちらはあまり更新しないのですが、青い鳥にて騒いでることが多いのでよろしければ…(@air__ap) (2018年2月1日 16時) (レス) id: 76ade9e498 (このIDを非表示/違反報告)
S(プロフ) - 返信ありがとうございます!! 早速検索かけます! (2018年1月28日 3時) (レス) id: 539aafff22 (このIDを非表示/違反報告)
あま音(プロフ) - Sさん» 恋色は青い鳥(@Kw_C2a)もやっておりますよ(*^^*) (2018年1月27日 9時) (レス) id: 95b1de6e50 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:「赤い櫻は冬に咲く」製作委員会 x他6人 | 作者ホームページ:
作成日時:2018年1月21日 9時