【あんスタ】ゆっくり、ゆったり、のんびりと【朔間零】 (ページ5)

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3話ページ5

『朔間くーん。

居るかな？』

あくる日の放課後。

朔間零の居城である軽音部の扉から

ひょこっと顔を出し、Aはある人物を呼ぶ。

「おう、A…センパイじゃね～か。

吸血鬼ヤロ～ならまだ寝てやがるぞ」

『おー、こーが君。

そかそか、まだ寝てたか～』

パイプ椅子に座りギターをいじる晃牙を見つけると、

Aはやっほーと言いながら軽く手を振り

魔王の領域に気軽に足を踏み入れる。

友人宅にお邪魔するみたいな足取りだった。

「なんか急用なら起こしてやろうか？」

『あーうん、いや、いいよ。

自分で起こすから。』

そう言うと、Aは吸血鬼の眠る棺桶に歩み寄り

直ぐそばにしゃがみこむ。

『朔間くん、

椚せんせがなんか君のこと呼んでたよ。

補習が有るとかなんとか…？』

用事を一通り話し掛けるAだが、返事は無い。

『よーし、では強硬手段に出させて戴こう～』

棒読み加減に大きな声で何かを宣言すると、

Aは棺桶を割と強めにノックし始める。

しかも途切れなく、連続で。

『おーい朔間くーん、そろそろ起きようかー』

さながら、それは借金取りのようだった。

Aは何かを喋っている様だったが、

響く高速ノックの音でほぼ聞き取れない。

『おーいおーい』

「おい、そろそろ止めねぇと…！」

「…

…煩ぇな」

晃牙が忠告するが、時既に遅し。

『わぷ』

聞いたこともないような低い声と共に、

Aは棺桶に引き摺りこまれ、

ノックの音が止んだ。