番外編:バレンタイン企画 ページ50
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振り向くとAの顔が目の前にある。煉獄を気にして覗き込んでいたようだ。
「大丈夫だ。なんでもない」
煉獄の言葉にAが安堵の表情を見せる。
「それより今日も頑張ったな。えらいぞ!」
うっかり褒めてしまえば、案の定Aは得意気になり、えっへんと胸を張り完全に調子に乗り始めていた。
いつもながら思う。Aのこの自信はどこからくるのだろうか。抜きん出た才能もなければ、際立つ強さもない。
それに性格も癖がありすぎる、人に好かれる要素なんて微塵もないのだが、不思議と周りはAを意識してしまう。なぜだ。
一方Aは訓練が終われば食べていいと言われていたご褒美のチョコレートを口いっぱいに頬張り、幸せそうに飛び跳ねる。
「(ああそうか。こいつはバカで愛嬌があるから可愛いのか)」
そんなことを思っていると、Aが一応煉獄に気を遣ってチョコレートを手にし『師匠も食べる?』とジェスチャーをした。
「いや、俺はいい」
甘いものがあまり好きではなので断ったが、美味しそうに食べるAを見て。
「うーん。だが、俺にも褒美は必要だ」
何かを思い付いた煉獄はAの腕を引っ張り、自分の方へ向かせた。
そして不思議そうにしているAの唇を強引に奪う。
途端に快楽の波が煉獄を飲み込んだ。
逃げないように左手でAの後頭部を抑え右手でAの顎を下に引き、開いた隙間から舌を捩じ込む。
溶けきれていないチョコレートを探り当てるとわざとAの舌に絡ませるようにして取り出した。
「ん、甘いな」
煉獄の熱のこもった色気ある瞳に見つめられ、一瞬ゾクっとしたものが身体を伝ったが。
(え?なに?誰か私を見て、る?…もしや…陰で私の命を狙っている者がいるのか!?)
とただ辺りを見渡しキョロキョロしていた。
勿論キスをされた認識などなく、師匠もやっぱりチョコレート食べたかったんじゃんと葦毛に扱われた。
「……………」
本当はそのまま押し倒してAの全部を食らい尽くしたい。目眩がしそうなぐらい甘く気持ちいい快楽の時を味わいたい。
だが、目の前の少女は今あった出来事など忘れて、すでに別のことに意識を向けている。
そんなAに煉獄は深いため息をついた。
ハッピーバレンタイン。青年に幸あれ!
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下野岸(プロフ) - たこさん» ありがとうございますぅぅぅ!兄貴いいですよね(o^^o)糧だなんて!そんなこちらこそその言葉を糧に生きていきます!更新頑張りますね!続編もお読み頂けたら幸いです! (2021年2月15日 20時) (レス) id: 89e4f77b3f (このIDを非表示/違反報告)
たこ - とってもおもしろいです!兄貴が大好きなのでこの作品を糧に仕事頑張ります(´;ω;`)更新頑張ってください!応援しています! (2021年2月15日 19時) (レス) id: 00aa00b8b4 (このIDを非表示/違反報告)
下野岸(プロフ) - まゆさん» ありがとうございます!すごく嬉しいです(TT)更新がんばりますので、こちらこそよろしくお願いします!素敵なコメント本当にありがとうございました! (2021年2月5日 23時) (レス) id: 89e4f77b3f (このIDを非表示/違反報告)
まゆ(プロフ) - とてもおもしろいです!煉獄さんのキャラが新鮮でおもしろい!続きが気になります!!これからも更新頑張って下さい! (2021年2月5日 22時) (レス) id: 89f8187042 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:下野岸 | 作成日時:2021年1月19日 8時