男の影 ページ32
「え、」
移動中の車で、俺は頭が真っ白になる。
「どしたん?」
山内が怪訝な顔で俺を見る。
「…今、Aが男と一緒に歩いとった」
─────────────────
「ただいま」
いつもなら、"おかえり〜!"と元気な声が聞こえるはずなのに、今日はしんと静まり返っていた。俺は焦燥感から、急いでAに電話を入れる。
「クソッ、なんで繋がらんねん!!」
何度かけてもAは電話に出なくて、昼間見たAと男の姿が浮かぶ。
「そんなん嫌や…」
泣きそうになりながら蹲っていると、玄関から
「ただいま〜」
といつものAの声が聞こえる。
「っ!!A!!」
「うわぁ!!!…って濱くん…?なんでこんな暗い中いるの?!」
カチッとAが電気をつける。
「え、え、!どうしたの?なんで泣いてるの?!」
Aに心配そうに頬を撫でられる。どうやら、無意識のうちに泣いていたみたいだ。
「なぁ、A…今日一緒に歩いとったやつ誰なん…?」
「え?濱くんいたの?」
「たまたま移動中に見たんや。で、誰なん?」
(あかん。こんなん聞いてたら、また泣けてきた。)
Aの次の言葉が怖くて、ぎゅっと手を握りしめる。
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作者名:みぃこ | 作成日時:2023年2月16日 15時