17 予想外の狂言(下) ページ19
「……国木田君。今の呼称はどうかと思う」
「五月蝿い!この非常事態に何をとろとろ歩いて居るのだ!疾く来い!」
『…非常事態?』
問い掛ける私に、国木田さんは想像通りの答えをくれた。
「爆弾魔が、人質を連れて探偵社に立て篭もった!」
「嫌だァ……もう嫌だ………」
影からそっと探偵社内を覗く。
中には二人の人物がいた。
一人は猿轡をされ、人質にされている女の人──ナオミさんだ。
そして──
「ぜんぶお前等の所為だ……『武装探偵社』が悪いんだ!社長は何処だ!早く出せ!でないと──爆弾で皆吹っ飛んで死んじゃうよ!」
爆弾の起爆装置を片手に叫ぶ彼は、谷崎潤一郎さん。
言わずと知れた探偵社員である。
いや、二人とも名演技すぎる。役者になれるのでは。
「あらら。随分と大層なものを持ち込んでくれてるねぇ…」
「犯人は探偵社に恨みがあって、社長に会わせないと爆破するぞ、と」
「思い当たる節が多すぎるね。それにあれ……高性能爆薬だ。この部屋くらいは吹き飛んじゃうくらいの代物さ。──それに、よーく見てご覧」
太宰さんの視線の先を辿ると、二つの爆弾が見えた。
──え、2つ??
「人質の傍に一つ、奥の机下に一つだ。更に、奥にあるのは特別性だね」
「どういう事だ太宰。俺には違いがわからん」
「奥にあるのは水銀スイッチが着いてる特注品だね。爆弾魔の持ってるあれでも起動できるだろうけど…少しでも爆弾が揺れようものなら……」
ドカンっ!
そう両手を広げた太宰さんの頭をスパンっと叩いた国木田さんは小声でキレている。
「巫山戯とる場合か!どうする?」
「うーん。人質の傍にある爆弾の方は、何かを被せて爆風を抑えるって手もあるけど……この状況じゃあなぁ…」
『…奥の爆弾はどうするんですか?』
黙って聞いているつもりが、思わず口を出してしまった。
偽物だってことはわかってはいても、予想外なことが起こったせいで多少動揺が顔に出ていたかも知れない。
太宰さんは観察するように私を見て、綺麗な笑みをみせた。
「なに、落ち着いて解体さえ出来ればあの程度の爆弾なら問題なく対処出来る」
「となると人質の身の安全と、爆弾魔の確保が最優先か…」
二人はアイコンタクトの後───
じゃんけんを始めた。
敦君がナニコレ?と云わんばかりに見つめてきたけど、ごめんなさい私にもわかんないです。
とりあえず首を振っておいた。
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作者名:砂上 | 作成日時:2023年3月21日 18時