13 虎も四捨五入すれば猫(下) ページ15
「なンだ。怪我人はなしかい?つまんないねェ」
美人なお姉さんは与謝野晶子さん。
彼女は綺麗な黒髪を耳にかけながら、つまらなそうに目を細めた。
「はっはっは。中々出来るようになったじゃないか、太宰。まあ僕には及ばないけどね!」
可愛い。
うん可愛い。
26歳とは思えない無邪気な彼は、稀代の名探偵である江戸川乱歩さん。
彼は私を見遣り、一瞬真顔になった。
え、何?!いつも笑顔な人の真顔は心臓に悪い!
「でもそのヒトどうするんです?自覚はなかったわけでしょ?」
麦わら帽子を被った歳若い少年は、宮沢賢治くん。
こんな見た目をしているが、彼に力較べを挑もうものなら、骨の数十本は覚悟しないといけない。
「どうする、太宰?一応区の災害指定猛獣だぞ」
手帳を片手に、眼鏡の位置を直す国木田独歩さん。
探偵社で一番の苦労人。
「うふふ、実はもう決めてある」
そして──元ポートマフィア所属。
探偵社のもう一つの頭脳──太宰治さん。
太宰さんは敦君と、私をチラリと見た。
さて、ここからが私のはじまりでもある。
「うちの社員にする。─もちろん、奥にいるAちゃんもね」
そう言って指を指されたせいで、皆んなの視線が一斉にこちらを向いた。
太宰さんと乱歩さん以外は、ここではじめて私の存在に気が付いた様だった。
「はぁあああ?!というか小娘!お前も居たのか!」
『はーい実は居ました。ご紹介に預かりました、真白 Aです。こんばんは、そしてよろしくお願いします』
皆の前で挨拶。
挨拶は大事!うんうん。
「悠長に挨拶などしている場合か!太宰!説明しろ!この小僧はともかく、此奴まで勧誘する理由があるのか!」
しかしまあ国木田さんは納得できないのか、太宰さんの首元を引っ掴んでぶんぶん振り回す。
「うへへはははは!国木田君揺れる、揺れてるよ〜」
「揺らしておるんだ!」
「まあまあ落ち着いてよ。これには空より高く、海より深ぁ〜い訳があってだね?」
仲良いなぁ…この二人。
そのやり取りをぼんやりと眺めていると、「ねぇ」とどこか固い響きを伴った声がかかった。
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作者名:砂上 | 作成日時:2023年3月21日 18時