検索窓
今日:1 hit、昨日:9 hit、合計:6,834 hit

13 虎も四捨五入すれば猫(下) ページ15

「なンだ。怪我人はなしかい?つまんないねェ」


美人なお姉さんは与謝野晶子さん。
彼女は綺麗な黒髪を耳にかけながら、つまらなそうに目を細めた。


「はっはっは。中々出来るようになったじゃないか、太宰。まあ僕には及ばないけどね!」


可愛い。
うん可愛い。
26歳とは思えない無邪気な彼は、稀代の名探偵である江戸川乱歩さん。
彼は私を見遣り、一瞬真顔になった。
え、何?!いつも笑顔な人の真顔は心臓に悪い!


「でもそのヒトどうするんです?自覚はなかったわけでしょ?」


麦わら帽子を被った歳若い少年は、宮沢賢治くん。
こんな見た目をしているが、彼に力較べを挑もうものなら、骨の数十本は覚悟しないといけない。


「どうする、太宰?一応区の災害指定猛獣だぞ」


手帳を片手に、眼鏡の位置を直す国木田独歩さん。
探偵社で一番の苦労人。


「うふふ、実はもう決めてある」


そして──元ポートマフィア所属。
探偵社のもう一つの頭脳──太宰治さん。
太宰さんは敦君と、私をチラリと見た。
さて、ここからが私のはじまりでもある。


「うちの社員にする。─もちろん、奥にいるAちゃんもね」


そう言って指を指されたせいで、皆んなの視線が一斉にこちらを向いた。
太宰さんと乱歩さん以外は、ここではじめて私の存在に気が付いた様だった。


「はぁあああ?!というか小娘!お前も居たのか!」
『はーい実は居ました。ご紹介に預かりました、真白 Aです。こんばんは、そしてよろしくお願いします』


皆の前で挨拶。
挨拶は大事!うんうん。


「悠長に挨拶などしている場合か!太宰!説明しろ!この小僧はともかく、此奴まで勧誘する理由があるのか!」


しかしまあ国木田さんは納得できないのか、太宰さんの首元を引っ掴んでぶんぶん振り回す。


「うへへはははは!国木田君揺れる、揺れてるよ〜」
「揺らしておるんだ!」
「まあまあ落ち着いてよ。これには空より高く、海より深ぁ〜い訳があってだね?」


仲良いなぁ…この二人。
そのやり取りをぼんやりと眺めていると、「ねぇ」とどこか固い響きを伴った声がかかった。

14 一等星の慧眼(上)→←12 虎も四捨五入すれば猫(上)



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.6/10 (28 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
83人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:砂上 | 作成日時:2023年3月21日 18時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。