12 虎も四捨五入すれば猫(上) ページ14
太宰さんが大きく飛び退く。
瞬間、前脚を振り被った虎の攻撃によって、先程まで彼が座っていた木箱が木端微塵に破壊された。
ぱらぱらと辺りに木屑が降り注いだ。
虎の───否、虎に変化した敦君の咆哮が周囲を震わせ、一つ、また一つと倉庫内の物が破壊されていく。
太宰さんはそれらの全てを軽やかに避けながら後退している。
さすが元ポートマフィアの幹部様…。
体術はそこまででもないって云われてても、ポートマフィア基準だもんなぁ…。
かくいう私はもちろん虎に相対する──はずもなく
未だ原型を留めている荷物の影から影へ隠れながら気配を殺している。
…だってほら、運動能力皆無だし。
あ、太宰さん、袋小路だ。
ひょっこりと物陰から顔を出していると、太宰さんとバッチリ目が合った。
にこーっと笑顔で手を振っておきました。
太宰さんもにっこりと笑顔を返してくれた。
…その笑顔に圧のようなものを感じた気がするけど、きっと気の所為！
「獣に喰い殺される最期というのも中々悪くはないが──君では私を殺せない」
太宰さんが一直線に飛び込んできた虎の額に触れる。
瞬く間に虎は掻き消え、敦君の姿に戻る。
倒れ込んできた敦君を一度は支えたものの、「男と抱き合う趣味はない」と、無情にも放り出した太宰さんが私に目をやる。
「随分とまぁ上手く隠れたものだねぇ…。確かに任せておき給えと云いはしたけどね」
『男に二言はなかったですね。お見事です！』
物陰から出て、二人の傍に寄る。
太宰さんは呆れたように肩をすくめる。
敦君をつんつんして遊ぶのにも飽き、辛うじて被害を免れていた積荷に腰掛け、ぼんやりしていると、国木田さんが倉庫内に入ってきた。
「ああ、遅かったね。虎は捕まえたよ」
「…！その小僧─じゃあそいつが」
「うん。虎の能力者だ。変身している間の記憶がなかったんだね」
あっけらかんと云う太宰さんに、国木田さんがため息混じりに頭をかいた。
太宰さんには報連相って言葉がないらしい。
「全く──次から事前に説明しろ、肝が冷えたぞ。おかげで非番の奴らまで駆り出す始末だ。皆に酒でも奢れ」
そうして入ってきたのは3人の男女だった。
──来た
13 虎も四捨五入すれば猫(下)→←11 罪を憎まず、人を愛せと(下)
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 83人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：砂上 | 作成日時：2023年3月21日 18時
