・ ページ16
「A、今大丈夫か?」
襖越しに炭治郎から声をかけられる。
たった今しのぶさんに治療をして貰って落ち着いた所だったので、二つ返事で承諾した。
「傷は大丈夫か?」
「うん、ちょっと深かったけど傷は残らないって。だから、そんな心配そうな顔しないで」
心配げに眉尻を下げる炭治郎に、笑みを零してしまう。
実家の柴犬に似てるな、なんて。
「すまない、嫁入り前の娘の顔に傷をつけてしまうなんて…」
「私の不注意だよ、炭治郎は何も悪くないって。それに、鬼殺隊入ってる時点でこういうことは避けられないよ」
…まぁ、それでも顔に傷がつくのは…女の子として、傷つくけど。
この場所を選んだのは私なのだから、文句なんて言えないよ、
するり、と炭治郎が傷のある頬を撫でた。
慈しむように、そっと。
布があてがってあるのだから、別にそんなに壊れ物を扱うように触らなくたっていいのに。
「だけど、やっぱり俺が気づいていれば、」
「もう大丈夫だって。それ以上言うのはナシ。それにさ、自分が気づいていれば、ってそんな余裕鬼を前にして無いでしょ。それ以上は傲慢だよ。」
べし、と炭治郎のつるりとしたおでこを叩けば、炭治郎は困ったように笑って、「そうだな」と言った。
「…A。」
「何?」
「俺に隠してること、無いか?」
「え?」
炭治郎の促すような笑顔に、戸惑いが隠せない。
隠し事、それは病気のことくらいしか思い浮かばないから。
「最近明らかに体調が悪いだろう?ご飯の味が感じないとか、あれから食欲がめっきり無くなって…最近ちっとも食べていないし、」
「それは、ちょっと太ったから…」
「にしても食べなさすぎだ。
知ってるんだぞ、藤の家で出してもらったご飯を半分くらいしか食べない上に、吐き戻してる所も。それに加えて最近は怪我をしてばかりで、なおかつそれに気づかないことも多い…まるで、痛覚が無いみたいじゃないか」
「違うよ、それは、」
「A、お願いだ。何か隠しているのなら、教えてくれ。」
510人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みょん(プロフ) - 複雑な気持ちになりました。貴重な体験、楽しい時間をありがとうございました。! 長文失礼しましたm(_ _;)m (2023年3月19日 21時) (レス) id: 1ba8aac85f (このIDを非表示/違反報告)
みょん(プロフ) - なりました。夢主の気持ちもめっちゃ分かるし炭治郎の気持ちもわかります。五感がなくなっていくという感覚などは、分からないけれど、本当に夢主になったような気持ちで読めることができました。作者様は本当に凄いですね。この作品を読んで言葉で表せないくらい (2023年3月19日 21時) (レス) id: 1ba8aac85f (このIDを非表示/違反報告)
みょん(プロフ) - めっちゃ感動しました(泣)大号泣です!感無量です。神作品を作ってくださってありがとうございます。特に最後の子守唄を歌うシーン。段々と炭治郎の声が聴こえてこなくなって、もっと大きな声で歌ってとお願いするシーンがなんというか、とても切ない気持ちに (2023年3月19日 21時) (レス) @page36 id: 1ba8aac85f (このIDを非表示/違反報告)
ワンコ - 感動(>人<;) (2021年3月29日 23時) (レス) id: 1e9b1e52b8 (このIDを非表示/違反報告)
ねこ - 柱の物語みたいです (2021年1月19日 22時) (レス) id: 751c2cfce8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ハナ | 作成日時:2019年11月23日 10時