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起き上がろうと思うものの、体が動かない。
ガラクタの山に体が沈んだまま、何故だか起き上がれずにいた。
納屋の扉の隙間から、春の陽気が漏れだす。
「あぁ、」
僕は今、この納屋みたいなんだ。
薄暗くて、Aさんとの多すぎる、それこそこのガラクタ共みたいに山になった沢山の思い出に身を沈めて、起き上がれずにいる。
Aさんという一筋の光を求めて、この薄暗い心を照らしてくれる、あなたを…待つことしか出来ない。
「A、さん」
会いたいよ。
ねぇ、なんで会いに来てくれないの?
僕、あれからあなたをずっと待ってる。
性懲りも無くあなたの影を探して、慣れない手で、柄にもなく花まで育てて、あなたをずっと待ってる。
待ってるんだ。
僕、待つのは得意じゃないんだよ。
Aさんだって知ってるでしょ。
ねぇ、
「Aさん、早く僕を助けて」
いつもみたいに、ねぇ
あのコロコロした笑い声を、
・
あの優しい足音を、
・
小さくて暖かなあなたの手を、
早く
「なんて、」
少々子供すぎるだろうか。
でもね、
早く大人になりなさいって大人は皆は言うけど、あなたを忘れることが大人になることなら、僕は一生子供でいいよ。
頬の血を袖で乱暴に拭って、じょうろを掴むと扉を思い切り開けた。
風がふわりと吹いて、桜が納屋に吹き込む。
あぁ、綺麗な桜。
なんて、うざったくて憎たらしいんだろう。
これ以上僕に、見せつけないでよ。
桜を睨むように見つめてから、くるりと踵を返すと、少し先の蛇口から水を汲む。
重たくなるけど、何度も往復するよりは1回で済ませた方がいいだろうと、並々に水を注いだ。
「んっ、」
両手で力を込めてじょうろを持ち上げると、やっぱり中々に重たくて。
別に急ぎ用でも無いしゆっくり水を零さないように花壇に向かった。
ところが、花壇には悲鳴嶼さんの姿はなく。
代わりに女子生徒が花壇の前に座り込んでいた。
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優兎 - 気づいたらめちゃくちゃ目ぇ真っ赤にして泣いてたんですけどどうしてくれるんですか(すみませんほんと神作品過ぎて泣きましたありがとうごさいましたぁぁぁ) (2021年10月1日 20時) (レス) id: 0546f8eab3 (このIDを非表示/違反報告)
マオ - 最高。こんな良い話を作って下さりありがとうございました。 (2021年7月4日 0時) (レス) id: 09a91c185e (このIDを非表示/違反報告)
マカロン大好き星人2号 - とても良い話でした。これには迷わず、泣いちゃいました(´;ω;`)感動する作品をありがとうございました(*_ _) (2021年4月7日 22時) (レス) id: c35a1d0183 (このIDを非表示/違反報告)
玲華(プロフ) - 前作に続き、泣けます。耳もとに優しい歌をも読みました。とても感動しました! (2020年5月26日 15時) (レス) id: 3c62b8e90c (このIDを非表示/違反報告)
愛心 - さらにこの続きとかもできたら描いてくれませんか? すごく面白いのでみんなが夢主を守るという物語を できたらよろしくお願いします (2020年4月20日 23時) (レス) id: b59d3295d5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハナ | 作成日時:2019年11月5日 7時