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前世では、花を見る度にあの光景を思い出して、吐いてしまったことも少なくない。









今世でも、吐きはしないものの…綺麗な花を見ると、吐き気をもよおすことも少なからずあった。









でも、しいていうなら。









「花を、育てれば…Aさんの事が、わかる気がするから」









そんなことある訳ないと分かっているのに、









こんなことしたってAさんは戻ってこないと、知っているのに。









『これは牡丹。こっちは菫。百合に鬱金香、あとこの花は金木犀』









今でも鮮明に覚えている。









花のような笑顔。









Aさんの笑顔より綺麗に咲く花を、僕はまだ知らない。









「牡丹に菫、百合、金木犀…」









それから、鬱金香。









今世ではチューリップといったか。









全部、覚えてるよ。









あなたが教えてくれたから。









「Aさん」









あなたが教えてくれた花、全部咲かせた。









チューリップも、明日には咲くよ。









きゅ、と閉じられたチューリップの花が、自分の心と重なって見えた。









明日咲くこの花とは違い、僕の心が咲く日はいつか分からない。









咲くのかも、分からない。









「…だめだ、」









マイナスな事ばかり考えてしまう。









Aさんは、またいつかって言ったんだ。









だから、そのいつかが来るまで僕は待つ。









あなたを想いながら、あなたの教えてくれた花達を愛でながら。









花壇のチューリップが、ふ、と揺れる。









まだ少し冷たい春風が、花を撫でた。









僕の長い髪の毛も、風に遊ばれてふわふわと舞うのだった。









「水…じょうろ、持ってくるんだった。」









立て付けの悪い納屋の扉を、力を入れて開けると、扉のすぐ側にじょうろが転がっていた。









それを手に取ろうと中に足を踏み入れると、足元に落ちていたブロックに足を取られ、あ、という間もなく転んでしまった。









「いた、」









ピリッ、という頬の痛みに、思わず手を頬に当てると、ヌルッとした感覚。









どうやらしまい忘れていた枝バサミで、頬を切ってしまったようだ。

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優兎 - 気づいたらめちゃくちゃ目ぇ真っ赤にして泣いてたんですけどどうしてくれるんですか(すみませんほんと神作品過ぎて泣きましたありがとうごさいましたぁぁぁ) (2021年10月1日 20時) (レス) id: 0546f8eab3 (このIDを非表示/違反報告)
マオ - 最高。こんな良い話を作って下さりありがとうございました。 (2021年7月4日 0時) (レス) id: 09a91c185e (このIDを非表示/違反報告)
マカロン大好き星人2号 - とても良い話でした。これには迷わず、泣いちゃいました(´;ω;`)感動する作品をありがとうございました(*_ _) (2021年4月7日 22時) (レス) id: c35a1d0183 (このIDを非表示/違反報告)
玲華(プロフ) - 前作に続き、泣けます。耳もとに優しい歌をも読みました。とても感動しました! (2020年5月26日 15時) (レス) id: 3c62b8e90c (このIDを非表示/違反報告)
愛心 - さらにこの続きとかもできたら描いてくれませんか? すごく面白いのでみんなが夢主を守るという物語を  できたらよろしくお願いします (2020年4月20日 23時) (レス) id: b59d3295d5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ハナ | 作成日時:2019年11月5日 7時

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