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入学式終了後、冨岡は虚ろな瞳をしながら廊下を進んでいた。
今は各クラスの始業のHRの最中。
幸いにも今年は自分の担任クラスは無い。
人と話すことが苦手な自分にとって、担任クラスを持つということはその分人と話さねばならぬということ。
「昨年は、苦労した…」
ほぼ毎日を無表情で過ごしているため、
何を考えているのか分からない、
進路の相談をしずらいと何人ものクラスメイトに親経由で話され、冨岡は酷く困惑したのを覚えている。
思えば、前世もそうであった。
些か自分は言葉足らずの様で、不死川を知らぬ間に怒らせていたり、胡蝶には皆に嫌われてますよ、とにこやかに毒づかれたり。
自分を理解してくれるのは、いつだって水の呼吸一派と、水瀬だけだった。
『冨岡さん、もう少し皆と話す時は沢山話した方がいいですよ、折角優しいお方なのに誤解されていて見ている私が歯痒いです…』
自分に寄り添い、言葉の足らぬ自分の主張も汲み取ってくれた。
人と話すのが苦手な自分だったが、水瀬と話す時は不思議と苦にならなかった。
『冨岡さん』
水瀬と居るだけで、自分の心に暖かな陽が差し込むようだった。
それは自分だけではない。
他の柱たちもそうだった。
「お前が、来なければ」
俺たちの心にもう朝日は昇らぬだろう。
またいつか、それは本当にいつなのか。
もう、待ちくたびれた。
「俺が来なけりゃなんだってェ?」
前方から凶悪な気配を感じ、ゆるりと前を見やると、額に青筋を浮かべた不死川実弥の姿があった。
今世でも顔にある大きな傷は、幼い時に野犬から玄弥を守った時に出来たのだとか。
顔の凶悪さは前世から全く変わっていない。
「いや今のは不死川に向けてでは、」
「言い訳なんざいいんだよォ!!テメェは前世も今世も変わらずクソみてぇな─────」
「待て待て。不死川、ここは教育の場だ。生徒の居る所でそういった発言は控えるべきだぜ」
今にも掴みかかりそうな不死川を抑えたのは、恐らく一緒にいたであろう宇髄天元。
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なーな - 初見です! 完結お疲れ様でした!めちゃくちゃおもしろかったし感動で涙でしたっっっ!!! 素敵な小説をありがとうございました! (2021年11月30日 15時) (レス) @page45 id: 03957af64f (このIDを非表示/違反報告)
もちゃ - 泣いちゃったw (2021年1月25日 0時) (レス) id: b4bfec10e3 (このIDを非表示/違反報告)
うさぎもち - 号泣しすぎて...う"う"う" (2021年1月20日 22時) (レス) id: 676d0f88d2 (このIDを非表示/違反報告)
さけふろ - 感動です! (2021年1月11日 15時) (レス) id: c7bf1c88de (このIDを非表示/違反報告)
夢鸞 - 号泣です。素晴らしいお話、ありがとうございました。 (2020年11月29日 12時) (レス) id: 640116ca2f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハナ | 作成日時:2019年9月30日 13時