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「?今日は嫌がらないの?」
「…うん。今日はいいの」
時透君は不思議そうな顔でこちらを見てたけど、気づかない振りをした。
「僕としては嬉しいから良いんだけど…なんか今日変じゃない?」
「そうかなぁ?いいじゃない、なんだって」
これが、最後なんだから。
その後はまた、他の人たちと同じように最近のことや、気になっていることなど、沢山の事を話した。
悲鳴嶼さんも時折相槌を打って、話してくれる。
気づけばもう、日が傾いていた。
「そろそろ行かなきゃ」
口ではそうこぼしたものの、体はなかなか動かない。
でも、いつまでもこうしてはられないから。
「…もういくの?」
「うん、長居はしてられないからね」
時透君の頭をもう一度、ゆっくり撫でて。
悲鳴嶼さんの方へ座礼をして、部屋を出る。
さよなら、さよなら。
すると背後の襖が大きな音を立てて開いた。
驚いてそちらを見ると、不安げな瞳の時透君が私を抱きしめた。
その姿は、母親に縋り付く子供のようで。
「どうしたの、時透く…」
「ねぇ、また会えるよね?」
この子は、本当に…鋭い子だ。
「…」
「なんで、黙ってるの?会えるよね?」
この手の質問は本当に苦手になってしまった。
嘘をつきたくない反面、やはり悲しませたくもない。
ごめん、ごめんなさい
「会えるよ、どうしたの急に?」
いつも通り笑えば、時透君もほっとしたような顔をした。
手のひらに、じわりと嫌な汗をかく。
ただ、辛かった。
早く、ここから出よう。
時透くんの体を自分から離し、逃げるように足を早める。
この罪悪感から逃げ出したかった。
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なーな - 初見です! 完結お疲れ様でした!めちゃくちゃおもしろかったし感動で涙でしたっっっ!!! 素敵な小説をありがとうございました! (2021年11月30日 15時) (レス) @page45 id: 03957af64f (このIDを非表示/違反報告)
もちゃ - 泣いちゃったw (2021年1月25日 0時) (レス) id: b4bfec10e3 (このIDを非表示/違反報告)
うさぎもち - 号泣しすぎて...う"う"う" (2021年1月20日 22時) (レス) id: 676d0f88d2 (このIDを非表示/違反報告)
さけふろ - 感動です! (2021年1月11日 15時) (レス) id: c7bf1c88de (このIDを非表示/違反報告)
夢鸞 - 号泣です。素晴らしいお話、ありがとうございました。 (2020年11月29日 12時) (レス) id: 640116ca2f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハナ | 作成日時:2019年9月30日 13時