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ふと周りを見ると、この教室には私以外誰もいなかった。
…ラッキー、ここ穴場かも。
そう思いながらぐっと背伸びをしていると、
ガラガラ
誰かが後ろの扉から教室に入ってきたようだった。
…独り占めじゃなくなっちゃったなぁ、とか思っていると、
ガタガタ
隣の席が引かれた。
びっくりしてそっちを見ると、
「あ、Aさんも次起業論？」
さっき出て行ったはずの山田君がいた。
引かれた席には、山田くんの鞄が置きっぱなしになっていたらしい。
「そうなの、山田君も？」
「そ、隣いい？」
「どうぞどうぞ」
暑そうに服をパタパタさせながら席に着く山田くん
二人きりの教室で同じオンライン授業を受けているこの空間が、
非常にむず痒く感じた。
．
『であるからして…』
眠すぎる。
今日は1限にも関わらず頑張ってお弁当を作ってきたから、非常に眠たい。
集中できなさすぎて、スマホをいじってしまう。
「Aさんってさ、」
ふと名前を呼ばれ、顔をあげる。
「バイトとかしてんの？」
「してるよ、和食レストランのホール、」
「あー、やってそう笑」
「何それ笑、山田君は？」
「俺ジムのスタッフ。」
「え、そんなのあるんだ」
「意外と同じ大学のやついるよ、山本達也って知らない？同じコースの」
「…聞いたことない、てか山田君も一緒なの？」
「え、ひどくね？」
「え、ごめん、ほんとに知らなくて」
「いいよそんな慌てなくて笑
前期も同じ授業でAさん見かけたことあるよ、」
「え、嘘だ知らない」
「原園さんとか福沢さんとかと一緒いるでしょ」
「え、なんでそんな知ってるの？？」
「まあ、有名人だからね」
「え怖いんだけど」
「悪い意味じゃないよ笑」
山田君は本当に喋りやすくて、授業そっちのけでお喋りに花を咲かせてしまった。
…でも、有名人って何！！
それだけは絶対、笑いながら教えてくれなかった。
笑うと目が細くなって、ちょっと可愛いかも、なんて思った。
．
続く
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作者名：みな | 作成日時：2023年12月14日 17時
