月は、上りて 参【煉獄杏寿郎】

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煉獄の大きな瞳は決して反らされない。
その中の燃えるような熱があることに気づいたAは腕を伸ばしてそっと煉獄の首に回した。

「…！A」

「……杏寿郎さんは、いつも…出会った時から、強引です」

「む」

「…い、いきなり、抱き締めてくるし…恋仲でもないのに迫ってきたり……まだ会って一年も経っていないのに、私しかいない、なんて」

「在り来たりだが運命だと感じた。俺は俺のその感情を信じた」

「…本当に、離れませんか？街中を見れば、綺麗な髪や手、細くて華奢な体で美しいお顔の…女性として整った方がごまんといます。…それでも…」

「俺は君を選ぶ。というか、俺は君が好みだからな、他の女性を見ても何とも思わん」

「……っ、杏寿郎さんは、本当に…」


だから怒ったのか。
絶対にAしか見ないという自信故に、身を引くと言ったAに怒りを露にしたのだ。


「……ごめんなさい。杏寿郎さんの気持ちを蔑ろにしたみたいで…」

「二度と言ってくれるな！」

「……ちなみに一方的に杏寿郎さんから離れたら」

「ふむ。………君は、縄と鎖どちらがいい？」

「…………ひぇ」


それ以上は精神衛生上聞かないことにした。



「…初恋、なのに…とんでもない人に好かれたみたいです」

「諦めてくれといっただろう！」



Aの手を取り身を起こすと座ったまま正面から抱き締められた。


「…ん、恥ずかしい…」

「慣れてくれ！これから生涯一緒に過ごすのだからな」

「……(なんか結婚の申し出みたいだなぁ…)」



何で煉獄はあんな短期間でこんなに自分を好きになったのか。
それは自分もしかり。
恋なんて知らなかったのに、最初は嫌悪しか無かったのに。


「……杏寿郎さん」

「ん？」

「……わ、私も…杏寿郎さんが…大好き……だから、他を見てほしくない、です」

「っ……！」



だから無意識に煽ってくれるな！

煉獄の心の叫びは、Aには聞こえない。



(…取りあえず一件落着でいいですか？)

(む、退院したら炎柱邸に来るように！)

(………ひぇ)




ーーー
読んでいただきありがとうございます。
早くもこの話も肆にいきますが、本格に"裏"の描写をいれようと思います。大人の描写を入れた時点でフラグをたてますので、お読みになる方は自己責任でお願いします。
また、もし「こういう話を書いて欲しい」等があればコメント欄にお願いします。できるだけ期待に添えるよう頑張ります(100％答えられるかはわかりませんが…)。

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