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正直自信がなかった。
今回は傷を治すような生易しいものじゃない。穴が開いた腹部を塞ぐのだ。


「(でも、やる…絶対やる!)」


折れた左腕はもはや感覚がない。
それでも両手を翳し、治癒の力を使い続けた。

無意識のうちにAの目からは涙が伝っていた。
それを見た煉獄は一瞬悲しげな顔をすると、目を閉じて集中、呼吸を整え始めた。

シイィィ…


出血が治まってくるのを確認するとAは全神経を集中させる。

細胞を、一つ一つ修復する。
血管を繋ぎ会わせ…傷付いた内蔵を治す。
肉を少しずつつけ…傷を外側から塞いでいく。
焦らずに…大丈夫。きちんとイメージできれば治癒できる…



「(失いたくない、絶対に…命に代えても、助けるの…!)」


Aの思いに呼応するように、白い光が眩しいほど溢れだす。
炭治郎はそれを呆然と眺めていた。
Aが怪我を治す時は、いつも翳した手元が光るだけだった。

それが…
二人を包むほどの眩しい輝き。
妹は、何かとんでもないことをしてるのではないか。
そんな思いさえした。


徐々に塞がっていく穴。
肉がついたとはいえその下の内蔵はまだまだ完治していない。

ここまで長く、強く力を使ったのは初めてだ。


耳鳴りがする。
頭が痛む。
呼吸が苦しくなり、息が荒くなる。
視界が霞む。


「っ、はぁ…はぁ…」


それでも手を止めるわけにはいかなかった。
手足が急速に冷えていき、何だか血の気がなくなっているようだった。


「も…少し………」


何とか、腹部の穴が塞がった。

煉獄はすでに意識を失っているが、胸が上下に動いているからきちんと呼吸できているようだ。
これで………命は救えたと思う。
あとは…

「おい!しっかりしろ!」

「い…のす…け……」


光が弱まったのに気付いたのか伊之助が声をかける。


「傷、塞がった……あとは、左目…、も……」

「もう無茶だ!やめろA!」


炭治郎が隣に来た。

事実、Aの顔は血の気がなく唇も紫に近くなっていた。


「なお、す…から…」

「っ、お前…」


Aが煉獄の顔に手を伸ばしたとき…
グラッとAの体が傾いた。そしてそのまま崩れ落ちる。

「お、おい!」

腹部を怪我している炭治郎の代わりに伊之助が慌てて抱き止めた。


「しっかりしやがれ!」



Aはもう意識を失っていた。


夜が完全に明け、隠が走ってきた。
意識が戻った善逸は慌てて禰豆子を箱に戻す。



煉獄とAたちは…大至急蝶屋敷へと運ばれていった。

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ゆり(プロフ) - あの…舐めるとか刺激が強すぎるので※付けてもらえませんか… (2021年8月14日 2時) (レス) id: 3faa843c0c (このIDを非表示/違反報告)
紫音(プロフ) - ohyutayaさん» 言いました!しかし本人は言った瞬間気付いておりません(^-^) (2021年8月8日 17時) (レス) id: 9d2f0b0ee2 (このIDを非表示/違反報告)
ohyutaya(プロフ) - 私の煉獄さんってサラッとすごいこと言いましたね (2021年8月8日 17時) (レス) id: a99629f64d (このIDを非表示/違反報告)
紫音(プロフ) - 晴琉-haru-さん» ありがとうございます(^-^)更新頑張って煉獄さんへの愛をぶつけていきますので、よろしくお願いします! (2021年8月5日 9時) (レス) id: 9d2f0b0ee2 (このIDを非表示/違反報告)
紫音(プロフ) - 空さん» ありがとうございます!夢主ちゃんにはいつでも瞬時に反応する煉獄さんです! (2021年8月5日 9時) (レス) id: 9d2f0b0ee2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:紫音 | 作成日時:2021年7月17日 16時

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