Please say「…」！ (ページ6)

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ぺけたん：ドキドキした？ページ6

正直、私の幼なじみは冴えない奴だ。

前髪長いし、眼鏡だし。

でも、そんな幼なじみの好きな所はいっぱいある。

例えば、歌声。

声域が広くて、豊かで。色んな歌を歌ってる所を聞いたけど、そのどれもがすっと耳に馴染むのだ。

それから、態度。

優しくて、控えめ。もう少し自我を出しても良いだろうに、笑って殆どを流している。

ダメな所もあるけれど、それ以上に良い所が多い。

『ねー、本当に前髪切ろうよ。』

ぺけ「え、嫌だ…。」

『えー！コンタクトにして前髪切れば絶対イケメンなのに！』

ぺけ「そういうの、興味ないから。」

放課後の教室。

委員の仕事をサボって帰った男子の代わりに、ぺけが手伝ってくれる事になった。

単純な作業の繰り返しに飽きた私は黙々と取り組むぺけに話し掛けている。

話してる最中も資料から目を離さないぺけ。

くそ真面目…。

そんなぺけに悪戯心が湧いて、そっと眼鏡を奪い取った。

ぺけ「ちょ…！」

『うわ、度強っ！』

ぺけ「それは良いから！返して！」

こちらに手を伸ばすぺけ。

私は身体を仰け反らせて取らせまいとする。

ぺけが手を伸ばし、私がどんどん仰け反っていく。

滑稽な戯れ合い。

と、私が座っていた椅子が一気に後ろに傾いた。

私の腕を掴んだぺけも一緒に傾いて…一緒に倒れた。

所謂、床ドン状態。

重力でぺけの前髪は顔に掛かってないし、眼鏡は私が奪っている。

つまり、私がイケメンと言ったその顔が間近にあるのだ。

しかも、私が頭をぶつけないようにする為か、ぺけの右手は私の頭に添えられていて、ダメージはあってもないようなもの。

ぺけ「A？顔…真っ赤だよ？」

『う、うるさいなあ！』

ぺけ「もしかして…ドキドキした？」

『ばーか！』

意地悪に笑ったぺけに眼鏡を返して、退けてもらう。

散らばった資料を片付けて、このままじゃ私が作業出来ないから帰る事にした。

ぺけ「んー…明日からコンタクトにしようかな。」

『え、何でいきなり！？』

ぺけ「前からコンタクトにしようとは考えてたし。それに、Aがあんなに赤くなるのが面白くてさ。」

『趣味悪い…！』

クスクスと笑うぺけから顔を背けて、ちょっと悪態をついてやった。

翌日のぺけは前髪を切って、コンタクトになっているなんて、今の私は知る由もない。