溢れる想い. ページ14
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生きることを諦めるな。独りになろうが、お前はこの世界を生きなければならないんだ─────
あの日、義勇さんに言われた言葉。
それだけを胸に今まで生きてきた。
…全部、受け止めたつもりだったのに。
前を向いて、歩けていると思っていたのに。
あんな些細な出来事で…。
禰豆子ちゃんと、妹の姿が重なっただけで。
『会いたいと、思ってしまいました。
どうして私だけ生きているんだろうって…考えてしまいました』
肩に掛けられた義勇さんの羽織をぎゅっと握り締めながら、膝元に視線を落とす。
家族の分までちゃんと生きると決めたのに。
間違っても "あの時死んでいればよかった" なんて考えないようにしていたのに…。
塞き止める術も、元に戻す術も無い。
一度升から溢れ出てしまった思いは、一体どうすればいいのだろうか。
なんて思ったその時。
優しくも、強引に。肩を抱き寄せられて。
「…此処に来てから、泣いてなかっただろう。家族を奪われた悲しみや憎しみを抱えながら、Aは涙ひとつ見せなかった」
頑張っていたのだな。
ひどく落ち着く声で、そう言われた途端。
胸をぎゅっと締め付けられるような感覚がして。
彼の前で初めて、声を上げて泣いた。
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作者名:Hana :*・ | 作成日時:2020年7月9日 17時