【HQ】婿に来てええですか -2-【宮治】 (ページ10)

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58.物に罪は無いページ10

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結局家に帰ったんは夕方過ぎで。

婆「おかえり～」

至っていつも通りのテンションで

迎え入れてくれた婆ちゃんは、

こっちを向きもせんと新聞を読んでいた。

『え』

食堂のテーブルには、

捨てたはずのシューズやらサポーターやら

新品のものばかりが並んでいる。

どんなにゴミを漁っても出てこおへんかったんに…

『は？え？…これなに？』

婆「Aが捨てたあと婆ちゃんが全部拾ってきてん。
勿体ないやんこんなん全部まだまだ使えんで？ほっほっほ！」

「感謝しいや！」なんて言う婆ちゃん…

ほんま、頭が上がらんわ。

『婆ちゃん、ありがとぉッ！！』

婆「物と人の心は大事にせな罰当たんねんで？
分かったか？」

『おんッ、ホンマにありがとう。』

一度も使ったことの無い新品達を抱きかかえて

涙にならないほど僅かなものが目尻を潤わした。

婆「おとんともちゃんと話しい。
時間は待ってくれへんねんで？
伝えたい事はちゃんと伝えな。
また後悔するよ？」

嫌という程身に染みて、

今だからその大切さに気付いたんや。

『おとんッ』

厨房に居ったおとんは、

私の姿を見て顔を歪ませた。

父「…アホ娘ッ、！家出とかほんま容赦ない奴やなお前はッ」

『ごめん、なさいッ、』

強く抱きしめられたけど、

平手打ちも同等なくらいオトンなりの愛やったんやろな。

和解して落ち着いて会話は出来てるけども、、

『やっぱご飯はまだ食べれへん』

婆「そうか…牛乳温めたるからちょっとでも飲み」

『おん』

食べる事はどうしても気が進まんかった。

婆「あんなに食べるん好きな子やったのに、
こんなげっそり痩せて」

父「まぁ、しゃあないやろ…でもこれが続くとあかんな」

口にしてもよく味が分からんねん。

肉とかゴム食べてるみたいで、美味しくない。

婆「病院連れてった方がええんちゃうか？
まだ中学生やで。大人の私らやって気持ちに整理つけるん必死なんにこの子はその倍やろ」

中総体が終わって3年の私らはバレー部をそのまま引退。

そういえばあれっきり、

バレーボールには一切触れてないねんな。

『おとん、出掛けてくる』

父「どこ行くんや？」

『ちょっとそこら辺散歩』

父「暗くなる前に帰ってき」

なぁおかん、私はバレーボールで

生きていかな、あかんかな？