【d!】主役にクリスマスローズを【夢】 (ページ7)

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7.廊下は暗いものページ7

少し前まで私はちょっと顔立ちが整ってるだけの普通の女子高生だった。

　それが今ではマフィアに拘束され、全身全霊で命乞いをしている無様な女に成り下がっている。

　悔しいか、と聞かれれば「別になんとも」と答えよう。今の私にとって大切なのは安寧の生活でもお金でも綺麗な外見でも無い。生きて父親に会えるのなら全てを捨てる覚悟だ。

　傍から見れば父親に依存した馬鹿な娘だと思われるかもしれない。私だってここまで父親と話したいと思っていることにびっくりだ。多分、今まで信頼していたものが壊れるという経験が無かったから、その分のショックが大きくて認められないのだろう。分かるまで諦めない、という私のめんどくさい性格が今ここで発揮されている。

「顔を上げろ」

　真剣な声音で命令され、言われるがままに引き締まった顔を上げる。独特の赤い視線に応えた。

「今のところ、お前が俺たちに不利益をもたらす存在では無いと見える。だから生かしておいてもいいだろう」
「ええんかグルちゃん。経緯は分からんがAちゃんはあの場にいたんや。怪しいと思えるけどな」

　紺髪さんが口を挟む。この人たちは誰一人として私の事を信用していない。信用出来るようなものが一切無いので当然といえば当然の結果だが。

「そうだな。しかしむやみやたらに殺すのは俺たちの理念に反する。だからと言ってこのまま釈放する訳にもいかないことは重々承知だ」

　殺す気は無いが解放する気もない。
　その言葉は永遠に解かれることの無い生き地獄が待っているような気がした。

「さっき此奴は"なんだってする"と言ったんだ。ならば文字通りなんだってして貰おう」

「つまり、どういうこと？」

「つまり、双葉Aを正式に我々ハオプトロレファミリーの一員にするということだ」

「「「「は？！」」」」

　リーダーさん以外の全員が声を揃えて疑問の音をあげた。

　ハオプトロレファミリーって、主役の家族？……ってそうじゃない。ファミリーはファミリーでもマフィアのファミリーでしょ？つまり私はこれからマフィアとして働かせられる訳であって……oh......。

　なんでもするとは言ったがまさか犯罪集団の一員にさせられるとは思わなかった。私平和ボケした未成年だけどいいのかな。

「ま、しばらくは雑用がほとんどだ。我々のために頑張ってくれ」

「は、はい、よろしくお願いします……？」

　しばらく部屋全体に微妙な空気が流れたことは言うまでもない。