【d!】主役にクリスマスローズを【夢】 (ページ47)

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47．エンディングにはまだはやいページ47

泣き止んだ後、オスマンさんに目の腫れを少し抑えてもらってから部屋を出る。抜けてしまった水分を取り戻すために食堂へ行くと2人仲良くタバコを吸っている鬱先生とコネシマさんがいた。まだ若干赤い私の目を見て鬱先生は微かに眉をひそめるがすぐにいつもの飄々とした顔に戻って、なんでもないように話しかけてきた。

「Aちゃんも1本吸ってみる？」
「アホか」

　容赦なくコネシマさんが鬱先生を蹴り飛ばす。ガキが吸っていいものじゃないって、やっぱり根は真面目な人なんだよな。要求は鬼畜だけど。

　お水をコップに注いでタバコのせいで煙たくなっている席に腰を下ろすと、気を使ってくれたのか火を消してくれた。

「私、一生ここで暮らすことになるかもしれません」

　水を少しだけ飲み込んで、喉を潤してから明るい声で言ってみた。この2人は私がここから出たいと思っていることを知っていたから、急にらしくないことを言う私に目を丸くした。

「なんや、ここの生活が気にいったん？働きすぎてドＭになったんちゃう？大丈夫？」

　やめて鬱先生、私ドＭにはなってないわ。ちょっと気が変わっただけだから変な言いがかりつけないで欲しい。コネシマさん大爆笑してるじゃないか。

　これからはこんな風景が本当に私の日常となるのかと思うと複雑な気分だ。はやく彼らのおもちゃというポジションから脱却したい。切実に。

「ふーん。ま、そしたらお前は一生ここのメイドとして生きるんやな」

「そうですね。とりあえず今の私の生きがいは皆様なので私の腕や足、毛髪から血の一滴までも貴方達に捧げる覚悟はありますよ？」

　そう言うと彼らは顔を引きつらせるのでついつい笑ってしまう。妄信的な女の子はお嫌いらしい。男の人は追いかけられるより追うのが好きだというもんね。自分から「どうぞ使ってください！」なんて言われたら引くか。それこそただのドＭである。

　まぁ、血の一滴まで捧げるというのは過剰表現だけど私の人生はこの人たちに委ねてもいいのではないかと思っている。亡き両親と同じくらい濃い関係を築いてきた彼らを心の底から信用することが今の私にはできるから。

　何がおかしいのだと小突いてくるコネシマさんをあしらいながら私はこれからのことを考える。

　私は、この人たちと共にまだまだ長く生きていきたい。

　人生を終えるのはかなり先になりそうだ。