【d!】主役にクリスマスローズを【夢】 (ページ44)

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44.乙女の告白ページ44

笑っていた。

　あの後結局何も買わないまま車の中に連れて行かれ、車内で私はただひたすらに笑顔で話し続けていた。皆は複雑そうな顔をしながらも私の馬鹿みたいな話に付き合ってくれた。まるで仲良しグループでふざけあうように。

　屋敷に戻ってきても私のテンションは変わることなく、事情を知らない人たちはよっぽど私がショッピングをエンジョイしてきたように見えただろう。それでいい。私のことを知るのは私だけでいい。

「寝る前に俺の方部屋に来い」
「わかりました」

　シャオロンさんと他愛もない雑談を繰り広げていると、総統様が耳元で囁く。あの男を彷彿させるから出来れば違う伝え方がいいんだけど、仕方がないか。

　食事を済ませてから総統様の部屋をノックする。

　全部話すと言っていた。あの日、何が起こっていたのかを。

　正気を保つのは得意分野だけど、大丈夫かな。理性的に話せる気がしない。それこそさっきまでの私の様に気を逸らし続けてしまうかもしれないのだ。嫌なところには目をつむる癖はずっと昔から染みついている。

　部屋の中には総統様とトントンさんとオスマンさんがいた。3人揃うと何とも言えない気迫がある。

「驚いたわ。今まで大人しかったセンサーが急に超緊急状態になったんやもん。まさか飛び降りを図るとはな」

　オスマンさんが私の髪を弄りながらやや怒気を孕んだ声でつぶやく。助かったのは９８パーはオスマンさんのおかげだもんな。遠くから頑張ってくれたのだろう。

「すみません。父が亡くなったと聞いて、動揺してしまって」
「……ま、未成年にはつらい話だもんな」

　成人になっても充分お辛い話だと思いますが。

「私は父親に会うために生きてきたんです。ただ、それだけの為に貴方達と仲良くしてきました。仕事も全うしてきました。でも、生きる理由は私の知らない間に消失していました。私は今ものすごくむなしいんです。これ以上むなしいまま生きていくのが辛いのに、総統様は私に生きてほしいと仰いました」

　淡々と私の中のドロドロとした感情の一部を吐き出す。こんな風に相手を責めるのは初めてだ。このどうしようもない怒りをぶつけたいが、怒鳴るのは違うと思ったから。あと、暴走しないためにも。

「総統様……あなたは一体どれだけ私を傷つければ気が済むのですか？このままじゃ私は貴方の事を本気で嫌いになってしまいそうなんです」

　母親譲りの綺麗に整った私の顔が、醜く歪んでいるような気がした。