【d!】主役にクリスマスローズを【夢】 (ページ42)

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42．決断ページ42

とんでもない再会を果たしてとんでもない真実を知らされた私の脳内は真っ白だった。

　なんだかんだで私はお父さんの存在が唯一の生きるたよりだったからだろう。

　マフィアに捕まったときから、父親ともう一度話すためだけに生きてきたのだから。めちゃくちゃ広い屋敷の掃除や自由気ままに過ごすメンバーたちの相手を頑張ってきたのは全部優しくて頼りない父親に会うためだった。

　ファザコンって思われるかもしれないけど、本当に私の中で彼の存在は大きいのだ。化け物だと知って悲しかったのは父親が私を気持ち悪がっていたのかもと思ったからだし、マフィアを嫌うのだって真っ当に生きてきた父親と正反対な場所にいるのが嫌だから。

　その人がもうこの世にいないなんて、生きる希望を失ったようなものじゃない。

　逃げ場なんてどこにもなくて、救いすら訪れないこの人生を無意味に送り続ける必要性がどこにある。この先幸せが必ず訪れるわけでもないのに、私は何にすがって生きていかなきゃいけないのだ。縋るものも支えるものも何もない。生きる意味すら見つからない。

　死んだ方が世界のためかもしれない。だって化け物だし。何もできることなんてないし。

　何かやばいこと起こす前に消えた方がみんなに迷惑をかけずに済んでいいじゃん。私は天国でお父さんと仲良く反省会でもして、やりなおしていくさ。

　ふわふわとした足取りで階段を上る。最上階だったから屋上はすぐだ。

　毒に耐性はあっても、体の治癒能力が速くても、激しい肉体の損傷を負えばさすがに私でも死んでしまえるだろう。

　ごめんね、みんなにプレゼント買って喜ばせるために外に出たいって言ったのに。

　ごめんね、無能でナルシストな私を受け入れて可愛がってくれたのに。

　ごめんなさい、貴方がいないと生きられないような脆い娘で。

　今、会いに行くから、たくさん話そう。私の大好きな人よ。

　クリスマスの日、私は地元から離れたショッピングモールの屋上で一人寂しく人生を終えた。

　緑のリボンの端がやけに色鮮やかに見えた気がした。