【d!】主役にクリスマスローズを【夢】 (ページ34)

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34.断行ページ34

私はあれから1週間、まるで何事も無かったかのように働き続けていた。余計なことを考えたくなかったから。

「Aちゃん、あのさ」
「ロボロさん。コネシマさんなら応接室にいますよ」
「おぉ、ありがと」

「Aちゃ～ん」
「オスマンさんお疲れ様です～。クッキー焼いてありますよ。よかったら食べてくださいね！」
「わぁ、ありがとう。甘いもん欲しかったんよ」

　最近では名前を呼ばれるだけで相手が求めるものが分かるようになった。私将来はいい奥さんになれるな。

　さて、掃除も一通り終わったし、トントンさんは珍しく外での仕事だからシュレッダーかけも必要無い。書庫はエーミールさんが使っているしコネシマさんもヘルプは要らなさそうな感じだったな。何をしよう、やることが減ってきた。

　何か仕事をしていないとどうしても自分の事を考えてしまう。普通じゃない私の事を。

　今まで私は自分の事を褒め続けて、否定することはしなかった。嫌なところは見ないようにしてきた。心が弱いから。

　可愛くて頭が良くて運動も出来る。完璧で何が悪いというんだって1人でドヤって突っ走ってきたのが私だ。他人の評価は気にしない、ようにしてきた。

「Aちゃん大丈夫か？」
「ぁ……シャオロンさん」

　掃除道具一式を取り上げられる。取り返そうとしてもすぐにかわされてしまった。知ってたけど。

「目の隈ヤバいで？」
「あー、最近睡眠不足なんですよね」
「ガキの癖して生意気や。休め」
「仕事がありま……わっ！」

　いきなりニット帽を被せられて前が見えなくなる。何するんだこの人。待って、そのまま引っ張らないで、どこ行くのよ。

　扉が開く音がしたかと思えばベッドに投げ込まれた。なんか普段寝てるやつと感触が違うんだけど。

　まさかと思って慌ててニット帽を外すと、ここがシャオロンさんの部屋だということが分かった。

「ちょっと！うら若き乙女を部屋に連れ込まないでください！」
「うら若き乙女っておい……とにかく、何もせえへんから大人しく寝ろや」
「自室で寝ますから！」
「どうせ抜け出して勝手に仕事しはじめるやろ！」

　図星過ぎてぐうの音も出ない。

　ムスッとした顔のまま冷たい布団にくるまる。こうなったら意地でも出てやらないんだからね。後悔してしまえ。

「じゃ、しっかり休んどき」
「え、行っちゃうんですか？！」

　…………やばい、失言した。