【d!】主役にクリスマスローズを【夢】 (ページ32)

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32.彼女の華ページ32

エーミールさんから元気をもらって、やる気が爆上がりしていた。今なら空だって飛べそう。

「今から大事な会談がある。お前はお茶を出したらすぐに出てけ」
「分かりました」

　やる気度数と仕事量が合っていないけどお客様へのおもてなしもメイドの大事なお仕事だ。頑張ろう。

　しばらくすると鬱先生が老紳士を連れてきた。お話しはこの3人だけでするらしい。

　老紳士に丁寧なお辞儀をして部屋を去る。早くお茶をいれなきゃいけない。

　最初はおぼつかない手つきだったお茶入れも今ではかなり上手くなっていた。流石私、マジ天才。口元がニヤついてしまうわ。

　それにしてもあの老紳士、優しい見た目の割に何だか禍々しい雰囲気だったな。同業者だろうか。

　でも、同業者の人がわざわざ1人で他のファミリーのアジトに乗り込んでくるのか？普通護衛とかつけないのかな。

　不思議に思いながら、お茶を部屋まで運ぶ。扉をノックしようとした時にコネシマさんの荒らげた声と鬱先生の慌てたような声が聞こえてきた。早速揉め事起こしてるの？！入っちゃまずいよねこれ？！

　隣の部屋に避難しようと思って扉に背を向けたとき、身体中に嫌な感触があった。

　部屋の中からはボウッという謎の音がする。ヤバそう。

　この時私はコネシマさんが老紳士にやられることを想定して部屋に飛び込んだ。そしてコネシマさんを部屋の隅まで突き飛ばして、懐かしい痛みを感じた。

　何かが刺さっていて脇腹がめちゃくちゃ痛い。絶対流血してるけど見たら多分ぶっ倒れるなこれ。

　手に水色の炎のようなものを纏っているコネシマさんは打ちどころが悪かったのか視点が定まっていなかった。ごめん、強く突き飛ばしすぎた。

「アンタ……なんで生きているんだ……？」

　杖を銃のようにして構えていた老紳士の顔が曇る。その声は掠れていた。

　なんで生きているんだって言われても、困る。致命傷になる所に当たらなかったからじゃないかな。

　鬱先生が老紳士を殴り、血飛沫が見えた。

　自分の血を見ないことで意識を保っていたのにこれじゃ結局結果は同じなわけで。

　私は何が起こったのかもよく分からないまま気を失ってしまった。