【d!】主役にクリスマスローズを【夢】 (ページ22)

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22.温かいパスタページ22

恋愛トラブルはショッピさんの異能に関わっている。どういうことなのか鬱先生に説明を求めると普通に答えてくれた。

「彼奴の能力は人の感情を昂らせるんや。怒りとか憎しみとか、恋心も。交渉のときは便利やけど効きすぎるとこうやって後から被害が回ってくるから厄介やな」

　コネシマさんやひとらんさんから彼らが異能力や魔法を持つものだとは何度も聞いてきた。だけど、その魔法というものがどういうものなのかを聞くのは初めてだった。人を昂らせる能力って聞くとなんだかパッとしないが、実際に使ったら強力なものだろうな。人の感情を無理矢理コントロールするなんて、早々出来るものじゃない。

「A……あ、大先生」
「ん、邪魔したな」

　トレイにパスタを乗せてやってきたショッピさんを見て鬱先生が立ちあがる。軽く頭を下げると手をあげて返しながら去っていった。

　コトリと目の前に湯気立つカルボナーラが置かれた。目の前にショッピさんが座り、2人で手を合わせる。自分より低い声の「いただきます」がなんだか心地よい。

「うん、美味しいです」

「そか。ありがと」

　にっと笑ってお礼を言う彼が可愛く見える。だけど、この穏やかなやりとりが何か違和感があった。今までならお礼を言われて終わり、なんてことは無かったからかな。会話の糸口が全く見つからない言い方が少し気になる。これ以上私と会話したくないのだろうか。あれだけつきまとっておいて？謎だ。

「ねぇ、Aって俺にたいしてすっごくドキドキしたり、ムカムカしたりしたことない？」

　不安に満たされた瞳でこちらを見つめるショッピさん。彼に対してドキドキしたりムカムカしたりしたことはもちろんあるけど、すっごくって程でも無い。一瞬で怒りも羞恥も過ぎていくので基本的に平静としていると思う。

　首を横に振るとショッピさんは微かに顔を歪めた。

「っ……なんで」

　やや荒々しい手つきでパスタを食べる彼の姿は誰がどう見てもイラついているのが分かる。多分、どこかで私に対して魔法を使ったんだけど効かなかったんだろう。なんで効かなかったのかは私にも分からないけど。

　なんだか声をかけ辛い状況になってしまい、黙々とパスタを頬張る。

　ショッピさん特製パスタはとっても美味しかったはずなのに、今では味が薄くなっていた。