【d!】主役にクリスマスローズを【夢】 (ページ20)

今日:25 hit、昨日:1 hit、合計:11,606 hit

20.仕事人間ページ20

しばらくファーストキスの件で扉の前でのたうち回っていたが、後頭部の痛みによって唇の感触がほぼ無かったことと何のロマンもないシチュだったことを理由にノーカンとしてそのまま爆睡した。

　数時間後、防音部屋のはずなのに何かの音がすることに違和感を覚えて目を開く。

「おはよう」

「…………」

　何故かショッピさんがいた。

　今まで気配もなく部屋に入ってくる人は何人かいたけど、寝てる時に来たのは初めて。この前自分の貞操観念が危ないと感じていたがここまでだとは思わなかった。

　念の為部屋を見回してみると、普段から見ている飾り気のないシンプルな部屋の中、ポツンと鏡面台に置かれた緑のリボン。間違いなく私の部屋だな。

「なんでいるんです？」

「いざというときに話せるエピソードを作っておこうと思って」

　まさかこれで一緒に寝た仲とでも言うのだろうか。そしたら事前に言うと知っていても、実際に言われたときに吹き出してしまいそうで怖い。何が怖いって失敗したときにどうなるかが分からなくて怖い。だってこれある意味マフィアとしての初仕事だよね？これ失敗したらショッピさんは仕事に手がつかなくてファミリー存続の危機に繋がる可能性だって無くはないもんね？

　さぁ、心を切り替えるんだ私。
　生きていれば恥ずかしい経験なんてこれからも山ほどあるだろう。こんな所で乙女を発揮して死ぬ訳にはいかない。

　急激に冷えていく頭の中で私の最終目的を考える。これは目的に到達するための大事な手段だ。恋人のふりなんて人殺しよりよっぽど楽な仕事だよね、うん。私なら出来るわ余裕だわ。

「とりあえず着替えるんで部屋の外かバスルームに行ってもらえます？」

「え、俺が移動するんですか？」

　当たり前でしょう私の部屋だよここは。

　しかしショッピさんはまったくもってベッドの上から動く気配が無いので仕方なく私がバスルームに入った。バスルームの鍵をかけてからふと思う。

　なんでお風呂には鍵がついているのに部屋の扉には鍵が無いんだろう……。

　
　部屋に入られなければお風呂に侵入するやつなんていないよね。なんでわざわざ風呂だけにつけたのだ、しかも普通に頑丈な鍵だし。

「まだ？」
「ごめんなさい、今出ます」

　ごく普通の女子高生がマフィアの考えなんて分からなくて当然か。気にしないでおこう。

　私は私の役割を果たしていればいい。