【d!】主役にクリスマスローズを【夢】 (ページ19)

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19.少女漫画的展開崩壊ページ19

何度も言うが私の見た目は母親譲りで可愛い。
　小さな頃から蝶よ花よと育てられて少し厄介な性格にはなっているが、外見だけはものすごく良い。昔は胸もあったし、ミスコンとかあったら1位を狙えるくらいには見た目に自信がある。

　でもね、全然モテない。

　周りでリア充が増えていく中で何故か私は誰にも恋愛的な目で見られたことが無かった。私も誰かに恋したことは無かったけど、1人くらい"好き"って思ってくれていても良くないか？

　別に常日頃からナルシストモードってことは無いし、むしろ深窓の令嬢っぽく大人しくしていた。喧しくて会話に入るのが億劫だったから。あれ、もしかして私コミュ障だと思われていたのかな。原因８割がたそうなんじゃ……。

　そんな私がキスしたことがあるかだって？ないよ畜生。

「無いわけじゃないです、けど」

　それでも無いというのは癪だから意味も無く嘘をついた。

　相変わらず楽しそうな顔でショッピさんは私と距離を詰めてくる。あの、私イケメンに弱いんですよ。そんなに迫られると心臓の動きが加速するし、怖い。

　至近距離に耐えられなくて後ずさるとショッピさんが吹き出した。変な顔したつもりは無いんだけど、なんでそんなに笑うの。

「ふっ、ファーストじゃないなら別にいいでしょ」
「いや、良くな____」ｺﾞｯ

　痛い。

　思いっきり扉に頭をぶつけた。

　ほんの一時、私の顔に温かみを感じたけどそれを打ち消すくらいの鈍い痛みが後頭部を襲う。涙が出そう。

「やー、ムードの欠けらも無いキスでしたね」
「いきなり近づくからですよ」
「今度は上手くやるんで、逃げないでくださいよ」

　懲りずに私の顔をがっちりと固定してくるので急いで口を手で塞ぐ。冷静になるんだ私。向こうのペースに飲み込まれるんじゃないぞ。

「らえれすよ。ふひなひほおあないをれりあい」※駄目ですよ、好きな人じゃないとできない

「なかなかお堅いんですね」

　普通に伝わってる？！
　ショッピさんの力が緩んだのでそっと手を外す。これ以上は何もしてこないと信じて。

「ロマンチストなの」

「ふぅん。じゃ、また明日ゆっくり考えましょう」

　自由気ままな奴は欠伸をしてから、ひらりと手を振って部屋を出ていった。

　1人自室に取り残された私はそのまま扉を背に預けて崩れ落ちた。

「思いっきりファーストなんだけどっ……！！」

　しばらく扉の前で奇声を発しながらうずくまっている私の姿はさぞ滑稽なものだったろう。