【d!】主役にクリスマスローズを【夢】 (ページ14)

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14.萌えはいらないページ14

「メイド服の方が雰囲気があるだろう」

　書類に目を落としたまま総統様は例の服についての答えを出した。いや、いくら雰囲気があるからってこの時代にメイド服でうろちょろするのは嫌だよ。なんでもすると言ったくせに文句ばかりと思われるかもしれないが、すんなりと受け入れられない要件ばかり出す総統様が悪いと思うの。

　私の不満げな視線を受けても余裕の笑みを浮かべて、挙句の果てには私なら着こなせるとまで言ってきた。

　着こなせる着こなせない以前に恥ずかしいんですよこっちは！私がメイド服着るんだったら上司のコネシマさんと鬱先生も着るべきだ。

　……やっぱりいつもの服がいいわ。ごめんなさい変なもの想像しちゃって。

　隣でコネシマさんが"スカートじゃコキ使えない"だの"ファミリーの品格が落ちる"だの言って地味に私の心を傷つけてくる。これでも味方しているつもりなのだろうが全然嬉しくないし頼もしくない。

「Aは俺が似合うと思って用意した服を着てくれないのか？」

　真っ赤な瞳で此方を見てくる総統様。ここで素直に着られませんと言って彼の好感度が上がるとは思えない。羞恥心を捨てるべきか、ご機嫌をとるか。

　今朝まで私は総統様に取り入ろうとしてたのだ。ここは大人しく言うことを聞くのが得策だろう。毎日着ていればきっと慣れる。

「分かりました。着てきます」

　コネシマさんが驚いた顔で振り向いてきた。いや、もうこれ何言っても無理ですよ。私は首を横に振って、そのまま部屋を後にした。

　メイド服を着ました。

　結論から言うと似合ってはいるが似合い方が違う。可愛いけどメイドらしさが全くない。なんというか、屋敷の従者と言うよりはメイド喫茶のお姉さん。スカート丈も長いのに何故こんなにもコスプレ臭がするのだろう。やっぱ童顔だから？おでこ丸出しだから？いや、さすがに額は関係ないか。

「制服に戻るか……」

「えー、似合ってるのに～」

　出た。突然部屋に出没する男。段々慣れてしまって恐怖心が薄れてきたぞ。私の貞操観念が危ない。

「こうやって髪をまとめれば……ほら、可愛い」

　糸のように細い瞳の男が私の髪をポニーテールにする。やけに手慣れているけど妹や彼女でもいるのかな。

「あの」
「あ、どうもオスマンです。よろしくな、Aちゃん」

「……よろしくお願いします」

　オスマンさん、めっちゃマイペース。