【d!】主役にクリスマスローズを【夢】 (ページ1)

今日:19 hit、昨日:1 hit、合計:11,600 hit

1.サンタクロース・イズ・カミングトゥタウン！ページ1

良い子にしているとサンタさんからプレゼントを貰える、という話を幼い頃に何度も聞かされていた。

　それでもクリスマスシーズンの私はクリスマス直前になって急いで母親の手伝いをしたり部屋の片付けを頑張ったりしても、プレゼントを貰い終わるとダラダラとした生活に戻るというあんまりよろしくない子どもだった。

　今じゃサンタからプレゼントなんて夢のまた夢だ。13歳のクリスマスからはせいぜい友達とプレゼント交換する程度で、いつもと変わらない味気のない日と化している。

　ちなみに遅刻魔の友達の家では悪い子にしているとじゃがいもの皮や棒切れがプレゼントされると聞かされているようで、去年は枕元に木の枝が散らばっていたと嘆いていた。後にそれは弟さんが頑張って作ったリースの残骸だと判明。

　どうしてこんなメルヘンチックな話をし始めたかと言うと、それは今日がクリスマスで、幸せそうなリア充たちが身を寄せあって煌びやかな街を歩いているのに嫌気がさし、遠回りだけれどクリスマスの影響なんかこれっぽっちも受けていない錆びれたシャッター街を歩いていたらサンタらしきものに出くわしたからだ。

　サンタらしきもので、本当にサンタかどうかはわからないけれど多分これはいいサンタさんじゃない。

　人気のない場所で真っ赤な服を着た大きな男。伸び放題な白ひげの奥にある口は緩んでいる。白いリュックはプレゼントが詰まった袋を連想させるが若干赤黒く汚れているのが気になるところ。

「____見た」

　低くも高くもない禍々しい声が一気に私の身体を恐怖のどん底に陥れる。今にも地面に根を張りそうな足をなんとか動かしてみる。

　やばい。

　まずい。

　あれはダメなやつだ。

　こんなことになるならリア充だらけの道を堂々と突っ切るべきだった。

　家がある方向へ全力ダッシュするが赤黒サンタ野郎は一定の距離を保って追いかけてくる。力に自信があってもあんな気色悪いやつに触れたくないからとにかく走る。

　あとちょっとで家に着くという所で雪が降り始めた。

　こんなロマンチックなホワイトクリスマスに不気味なサンタと鬼ごっこだなんてありふれた話だが、実際に起こったらなかなか奇抜な光景。リアルであっちゃいけない展開だ。

　玄関に飛び込むとたまたま休みだった父親が怪訝な顔でリビングから顔を出し、そのまま硬直する。

「めりぃくりすまぁす！ヒョホホ！昨晩のこと、オレは知ってるよ？」