00/もう一度 ページ3
重い瞼を開けて、眩しい光に目を瞑る。
「やあ」
そう、聞こえたのは幻聴でもなく。瞼を開けるが、声を発した”何か”は見えない。光が眩しい。
「ああ、目を瞑ってて」
落ち着いた、そんな声とは別に少し笑いを堪えた声が聞こえる。
「ええと、田中
別にキミでも良いんじゃないのか、そう思ったが口には出さなかった。
「出来るのなら」
私の発言に笑った人がいた。
「お前なら、そう言うと思ってた」
待ってたぜ、とそう言ったのはかつての双子の兄。
「り、き」
「おお。お前の兄貴の理貴だ」
ぎゅ、と抱き締める。確かにここに居るんだ。双子の兄が。存在を確かめるように、ただ抱き締める。
「置いて、逝かないでよ。馬鹿理貴」
「ッ‥‥ごめんな」
「本当に、馬鹿」
謝らないでよ、と言うとごめんな、が返ってくる。
でもそれが理貴っぽくて。馬鹿野郎、そう言うと馬鹿って言いすぎだろ、と笑われた。
「お前を、待ってた」
そう真剣な顔で言われちゃったら、泣くしか選択肢ないじゃん。本当に馬鹿で、私を泣かすのは一人前で、真面目で。
「約束、しただろ?」
「覚えて、るんだ」
ほら泣き止め、そんなこと言われたって流れるものは流れるんだ。ちゃんと待ってくれるのも好きだよ。
「ええと、良い所で止めちゃうけど。命、授けて良い?」
「はい、お願いします」
「宜しく頼む」
また、双子が良いね。
また、家族が良いね。
また、抱き締めて。
また、喧嘩して。
また、笑って。
また、泣いて。
また、約束しよう。
もう一度、会うと。
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作者名:無気力@呉葉 | 作成日時:2022年11月27日 2時