4-8.ぶりっ子ちゃんの認知 ページ9
「も〜もえたんったら〜。あたしも分かんなかったけど!」
と、けらけら笑う女子リーダーの志真崎さんに「オイ」と軽くツッコむ大谷先生。そして巻き起こる笑いの第ニ波。わたしの前の席の田山君でさえ肩を小刻みに揺らしている。
自然な笑いを生み出せたのは、生まれて初めてな気がする。以前は「ボケ」に該当する発言をしても滑っていた。あるいはわたしに過剰に気を遣うように笑いを堪えている空気があった。しかし今は、そんなよそよそしい遠慮が窺えない。普通に、ただおかしくて笑っている。
ぶりっ子プレゼンのおかげで、わたしへの認識が少し良い方向に変わったのだろうか。
「朝戸衣」
「はっ、はぁい!」
突然呼ばれて思わず席から立ち上がり、すぐに座った。いつの間にか問四の解説が終わっていたらしい。
「まず問五の問題文を読んでくれるか」
そうだ、もとは蘭ちゃんの次がわたしなわけだから、二回当たることになる。今度はスマートなところを見せなければ。
「あ、アイキャント、アンダースタンド、ヒズ……えっと……ぺ、ぺすぅいちょろぐぃ!」
「
〜〜〜〜〜
「百恵ちゃん、助けてくれてありがとう……」
「んーん♡ ホントはびしっと正解してカッコつけようとしたんだけどぉ、失敗失敗☆」
それから放課後。今日は蘭ちゃんが日直なので、黒板消しを手伝っていた。お礼を言う蘭ちゃんは申し訳なさそうにしながらも、やはりどこかぼんやりとしている。
「……蘭ちゃん、大丈夫ぅ?」
「え……?」
「今日、ずっと上の空じゃなぁい?」
わたしの身長では届かないところを助けながら「そ、そうかな」と平静を装うように笑みを作る。
大谷先生の強烈な筆圧との格闘を休戦して、思い切って言ってみた。
「もしかしてぇ、娯楽同好会のこと……?」
蘭ちゃんの手が止まった。頷くようにうつむいて少ししてから、黒板消しを再開させる。
「……まだ、頭の整理がついてなくて」
聞けば、昨日からずっとこの調子らしい。先程の演習プリントは半分も解いておらず、日直の仕事である日誌も手つかずのままだという。あの真面目な蘭ちゃんが、だ。
「ごめんね、先に行ってお昼ご飯食べておいてくれるかな……?」
黒板を消し終えてから、一旦蘭ちゃんと別れて一足先に部室に足を運ぶことになった。
また後でねと手を振る時も、八の字眉には形容し難い心情を積もらせていた。
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やま(プロフ) - 更新待ってます!! (2021年9月19日 18時) (レス) id: 0eb68c7075 (このIDを非表示/違反報告)
柚子 - もえたん可愛いですね!私自身、ぶりっ子の事が嫌いまでとはいかないけど少し苦手意識があったんですが、この作品を読んでぶりっ子への意識が変わりました!ありがとうございます!これからも更新頑張って下さい!! (2021年8月24日 1時) (レス) id: 12dcb448c9 (このIDを非表示/違反報告)
夜瑠 - 面白くて、『一周回ってぶりっ子を許せる小説』から一気見しちゃいました!!皆大好きです!!次の更新楽しみにしてます!! (2021年7月19日 19時) (レス) id: ef33b3228d (このIDを非表示/違反報告)
桜夜桜もち - こんな一生懸命で可愛いぶりっ子なんて許す以外に方法あります…?! (2021年7月17日 15時) (レス) id: 54667db88c (このIDを非表示/違反報告)
豆の字(プロフ) - リカさんさん» ありがとうございます!!お楽しみいただけてとっても嬉しいです!これからもぶりっ子の可能性を発掘していきます!偏見や先入観だけで片付けるには、あまりにももったいない逸材なので……! (2021年7月16日 18時) (レス) id: dee9e908a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:豆の字 | 作成日時:2020年3月30日 18時