4-23.ぶりっ子ちゃんの幻視 ページ24
蘭ちゃんはわたしの手首を掴み、天敵の気配を察知したシマウマのごとく駆け出す。しかし入口のドアまであと数歩のところで、わたしは机の角に腰を強打して転んだ。
「だっ大丈夫……！？」
どんくさいわたしを見捨てずに差し伸べてくれた手を取ろうとするが、全身が言うことを聞いてくれない。この期に及んで、情けないことこの上ない。
「もえたん……腰抜けちゃったみたい」
「だから、蘭ちゃんだけでも逃げて」と蘭ちゃんに罪悪感を抱かせないように、いつものももえがおで見送ろうとしたが。
「……そんなの、出来ないよ」
ゆっくりと首を横に振る仕草に、確固たる意志を感じる。静かに歩み寄り、入り口に置いてあったプラスチックの青いバケツを渡してきた。ぼんやりとするわたしの前で、蘭ちゃんはもうひとつを取って頭に被り、隣で体育座りした。
見てはいけないものを見ないようにするためなのか、危機的状況に陥った時はまず頭を守れという教えを倣ったためなのか。とにかくわたしもバケツを被った。胸元まで隠れる大きさだった。
身を寄せ合い、暗闇の視界で覚悟を決めた、その瞬間。ドアが跳ね返るほど激しく開かれた。
「どうした！？ ……え！？ 何があったんだ、バケツガールズ！」
顔は見えないが、その声は夏目先輩だ。――大変だ、このままでは夏目先輩まで巻き込んでしまう。
「夏目先輩……逃げてください……」
「え？」
恐怖で喉が塞がって上手く言葉が出ないわたしの代わりに、蘭ちゃんが続けた。
「幽霊が……幽霊が出たんです……」
流しっぱなしの水道の音がよく聞こえるほど静まり返ると。
「こら〜洋！ 本気で怖がらせたらだめじゃないか」
洋――洋先輩？
「大丈夫だよ。実はあれ、おれの友達なんだ。幽霊じゃないよ、多分」
恐る恐るバケツをのけると、高校生とは思えないほど小さな男の子が目の前に立っていた。見覚えがあるはずなのに、自信が持てない。そうだ、この曖昧さは幾度も味わってきた。絶対とは言い切れないが、あの子は初対面ではない。
「ごめんね。反応が面白かったから、つい。……
プレゼンの意識調査の時、階段の踊り場で佇んでいた男の子だった。
〜〜〜〜〜
↑三年 夢野 洋
『ななめーかー』様より作成致しました。
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やま(プロフ) - 更新待ってます!! (2021年9月19日 18時) (
レス) id: 0eb68c7075 (このIDを非表示/違反報告)
柚子 - もえたん可愛いですね！私自身、ぶりっ子の事が嫌いまでとはいかないけど少し苦手意識があったんですが、この作品を読んでぶりっ子への意識が変わりました！ありがとうございます！これからも更新頑張って下さい！！ (2021年8月24日 1時) (レス) id: 12dcb448c9 (このIDを非表示/違反報告)
夜瑠 - 面白くて、『一周回ってぶりっ子を許せる小説』から一気見しちゃいました！！皆大好きです！！次の更新楽しみにしてます！！ (2021年7月19日 19時) (レス) id: ef33b3228d (このIDを非表示/違反報告)
桜夜桜もち - こんな一生懸命で可愛いぶりっ子なんて許す以外に方法あります…?! (2021年7月17日 15時) (レス) id: 54667db88c (このIDを非表示/違反報告)
豆の字(プロフ) - リカさんさん» ありがとうございます！！お楽しみいただけてとっても嬉しいです！これからもぶりっ子の可能性を発掘していきます！偏見や先入観だけで片付けるには、あまりにももったいない逸材なので……！ (2021年7月16日 18時) (レス) id: dee9e908a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：豆の字 | 作成日時：2020年3月30日 18時
