4-38.ぶりっ子ちゃんの男気 ページ39
何よりも不思議なのは、わたし自身だったらしい。ずっとうわの空のわたしを、みんな揃って不思議そうに見ていた。
それに気づいた途端、急に恥ずかしくなって、うつむいたり誤魔化すようにへらへら笑ったり、自分でも何がしたいのか分からないままジェンガに歩み寄った。
簡単な緑。普通の青。ヤバイ赤。
選ぶ色は、最初から決まっている。
「ん〜、もえたんみたいな清純派には〜体張るのとか似合わないからぁ〜、ぴょこぴょこかえるさん色にしちゃおっかなぁ〜」
「うん、そだね! 緑がいいぴょこ!」
「無茶はよくないぴょこからね!」
特に酷い目に遭ったもりりん先輩と夏目先輩が物凄い勢いで同調する。ええ、そうですよね、なのでやっぱり、平和に和やかに緑色に――
するような事なかれぶりっ子ではなーい!
「はわわっおてて滑っちゃったぁっ!」
引っこ抜いてしまった。赤のブロック。
「ワーーッ! もえたんのドジっ子ー!!」
「もえたんは〜、ぶりっ子ですよぉ♡」
コテッと小首を傾げてももえがお。蘭ちゃんの驚きの奥には心配、泉先輩の驚きの奥には呆れ、そしてもりりん先輩と夏目先輩の驚きの奥には密かな期待が的中した高揚感が隠れているように思う。夢野先輩はというと……「確かに、赤色のかえるもいるもんね」と冷静に納得していたので、ちょっぴり悔しかった。
いざお題を確認するとなると、二の足を踏んだ。けれどぶりっ子らしく潔く、握った拳を開きみんなに見せた。
『みんなで電車ごっこをする』
一斉に顔を上げ、黒板の上の時計を見た。下校チャイムが鳴ったからだ。悠長なリズムなのに早く帰れと急かされているようなそれが頭上に降ってくると、窓に差し込む薄ぼけた橙色を帯びながら化学講義室の隅から隅まで広がり満たしていった。
「長さ足りないけど……」と、夢野先輩はわたしに縄跳びを渡した。薄緑のビニール製で、結びを解いて真っ直ぐ伸ばすと、中央の、飛ぶ時ちょうど地面を叩きつける部分がぼろぼろに色褪せていた。
その夢野先輩の身長への執着の象徴を手に、わたしは教卓を一周二周した後、
「もえたんトレイン、とうちゃ〜く! 次は言紡高校下駄箱に参りま〜す! 発車まで二分前ですぅ〜」
と、化学講義室駅に停車した。
「じゃー今日の活動はおしまい! みんなで乗り込もー!」
「まずは片付けが先でしょ」
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やま(プロフ) - 更新待ってます!! (2021年9月19日 18時) (レス) id: 0eb68c7075 (このIDを非表示/違反報告)
柚子 - もえたん可愛いですね!私自身、ぶりっ子の事が嫌いまでとはいかないけど少し苦手意識があったんですが、この作品を読んでぶりっ子への意識が変わりました!ありがとうございます!これからも更新頑張って下さい!! (2021年8月24日 1時) (レス) id: 12dcb448c9 (このIDを非表示/違反報告)
夜瑠 - 面白くて、『一周回ってぶりっ子を許せる小説』から一気見しちゃいました!!皆大好きです!!次の更新楽しみにしてます!! (2021年7月19日 19時) (レス) id: ef33b3228d (このIDを非表示/違反報告)
桜夜桜もち - こんな一生懸命で可愛いぶりっ子なんて許す以外に方法あります…?! (2021年7月17日 15時) (レス) id: 54667db88c (このIDを非表示/違反報告)
豆の字(プロフ) - リカさんさん» ありがとうございます!!お楽しみいただけてとっても嬉しいです!これからもぶりっ子の可能性を発掘していきます!偏見や先入観だけで片付けるには、あまりにももったいない逸材なので……! (2021年7月16日 18時) (レス) id: dee9e908a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:豆の字 | 作成日時:2020年3月30日 18時