3-48.ぶりっ子ちゃんの逃走 ページ49
「蘭ちゃんのおかげで、プレゼン成功だよぉ！ もえたんのわがままに付き合ってくれて、本当にありがとねっ♡」
「ううん！ こちらこそありがとう……。百恵ちゃんのおかげで、人前で話すのが大の苦手でも、頑張って伝えようって思えたの」
このやり取りも、もう何度目だろう。
HRが終わって一緒に教室の掃除をする時も、教室に残って談笑をする時も、そして今、そろそろ下校を促すチャイムが鳴りそうな渡り廊下を歩く時も、反省会という名の「ありがとう」の応酬は途絶えなかった。
わたしの「ありがとう」には、ふたつの意味がある。ひとつは、力を貸してくれた蘭ちゃんへの感謝。そしてもうひとつは、そのたった五文字を伝えられなかった田山君への「ごめんなさい」。詫びるように、償うように、病的に繰り返した。
「人生で一番頑張れた二週間だったかも」
後ろを振り返ってから、蘭ちゃんは妙にそわそわした手付きでFINEを開いた。わたしもお揃いの画面にした。おびただしいまでのプレゼン関係のメッセージ。素早くスクロールしてもなかなか一番上まで辿り着かない。
『ねぐらん』
FINEでしか目にすることの出来ない彼女の愛称。わたしもその名で呼びたい、でも今はまだ「蘭ちゃん」で満足している自分がいる。なんて次なる悩みの種を育てていると、廊下のほんのりとした夕焼け色が急に濃く染まった。
「――百恵ちゃん」
蘭ちゃんに耳打ちを受けた。同時に手首を掴まれた。何事か、と目だけ動かすと。
「後ろに誰かいる。さっきからずっと後をつけられてる！」
言い切るより早く、わたしの手を引いて駆け出した。後ろでバタバタ足音が聞こえる。追いかけられている。しかもそう遠くない。戸惑いながらもわたしも鈍足なりに必死に走った。
下駄箱を横切り、角を曲がり、職員室、何かの準備室、図書室、生徒会室、そして――行き止まり。
蘭ちゃんは掠れた声で謝った。フォローしようとしたが、声が出ない。すっかり硬直したわたしを庇うように、蘭ちゃんは追っ手の前に出た。
「ご、ごめんね、怖がらせて！」
距離を詰めながら、追っ手が声を響かせた。その後ろにもうひとりいた。夕焼けが逆光になってシルエットしか見えない。でも、どこか見覚えがあるような。
やがて、僅か数メートルの距離まで縮まった時、確信を得た。
例の頭の双葉。
あの時の、ももえーるの目撃者だ。
【第三章 良い子ぶりっ子は誰が為に編 完】
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やま(プロフ) - 面白いです、笑っちゃいました。 (2021年9月19日 13時) (
レス) id: 0eb68c7075 (このIDを非表示/違反報告)
無気力に自信が有る人 - あ、真白と同一人物です！ (2021年7月25日 17時) (レス) id: 19b8beddf0 (このIDを非表示/違反報告)
無気力に自信が有る人 - 思わず笑っちゃいました！しかも、なんか余計にクラスの人に�猜僂陛朖瓩辰道廚錣譴修Δ覆海箸鬚錣兇錣供帖帖帖帖�この小説凄く面白いです！ (2021年7月25日 17時) (レス) id: 19b8beddf0 (このIDを非表示/違反報告)
豆の字(プロフ) - 真白さん» ぶりっ子についてプレゼンする人なんてそうそういないですよね（苦笑） (2021年7月16日 18時) (レス) id: dee9e908a6 (このIDを非表示/違反報告)
豆の字(プロフ) - Rukia (ゆっくりゆる)さん» ありがとうございます！！一人一人の登場人物をこんなに丁寧に見てくださって本当に嬉しいです！（いつか名前も覚えていただければ大変恐縮です！）りうむちゃんのことも好きになってもらえて嬉しいです、ぜひ推してあげてください！ (2021年7月16日 18時) (レス) id: dee9e908a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：豆の字 | 作成日時：2019年12月7日 15時
