1-2.ぶりっ子ちゃんの萌芽 ページ3
今思い返せば、私の中学時代はまだ幸せだったかもしれない。
日陰に心地良さを感じる性格ゆえに、友人はごくわずか。孤独が怖くて、気の合わない子と無理くり友達として付き合っていた年もあった。そうして学年が変わってクラスが離れると親密度はふりだしに戻る。他人同然となり、廊下ですれ違っても見なかったふり。これといって趣味がないわたしは上っ面だけの無味乾燥な関係しか作れなかったが、現状と比べれば確かに幸せだった。
そんな人生にいたく虚しさを覚えたわたしは、高校入学前の春休みに勝負をかけた。クラスの中心人物のような、明るくて可愛くて面白い女の子になりたいと、本気で夢を見た。いわゆる高校デビューだ。ハイリスクハイリターンの危険極まりない賭けだ。
危険が及びかねない選択肢はことごとく避けて来たが、今回ばかりはその臆病さを力強く振り払った。変わりたい努力をみなぎらせた。
――とどのつまり、わたしはその努力の方向を見誤った。
話題の引き出しを増やすべく、手始めに映画を観た。アメリカのコメディ中心に、ネットで名作といわれている洋画をとりあえず観てみた。何というか、色々と寛容で、カルチャーショックを受けた。
二つ目は純文学を読んだ。難解すぎる。同じ日本語とは思えない。それでも楽しめた作品はいくつかあったが、三日坊主になってしまった。
三つ目は新聞を読んで時事ネタを取り込んだ。まったくもって興味を持てなかった。
四つ目は雑学を知った。はたして役に立つのだろうか。
五つ目はタピオカミルクティを飲んだ。気分だけ今風の女子高生になれた。
最後はガーデニングの専門用語を覚えた。ちなみに植物を育てたことは一度もない。あのときのわたしは血迷っていたのかもしれない。
次に外見を変えた。美容室に行って髪を茶色に染めた。ちょっと巻いて、ツインテールにした。眼鏡をやめてコンタクトレンズにした。赤っぽいカラコンだ。(校則は比較的緩いので身なりは厳しく言われない。)
お父さんもお母さんも、わたしの変貌ぶりに驚きながらも、可愛いねと喜んでくれた。
地味子だったわたしは変われた。鏡の中のわたしは目に自信を灯していた。今まであれだけぼんやりと濁った目をしていたはずなのに。素晴らしい高校生活を送る自分の幸せに満ちた顔を思い描き、夢心地に浸った。
まだ、道は外れていない。きっとここからだ。狂い始めたのは。
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酔風 - 面白かったです…夏目先輩かっけぇ！萌ちゃん許せるどころかファンになりそう…。続編読んできます(｀･ω･´)ゞ (2021年7月25日 10時) (
レス) id: d8696aafac (このIDを非表示/違反報告)
夜瑠 - 夏目せんぱぁああい！！いつか、いつか言紡高校に入学してもいいですかっ！？！？ (2021年7月19日 17時) (レス) id: ef33b3228d (このIDを非表示/違反報告)
彩華 - 初めまして！こんな小説を求めていました！この小説を読んだ方が、ぶりっ子＝悪女とかでは無くて、ぶりっ子は一つの個性なんだなって思ってもらえると良いですね！ももたんめっちゃ好きです！頑張ってください〜！ (2021年7月17日 15時) (レス) id: da4daeacca (このIDを非表示/違反報告)
桜夜桜もち - 「ふんぬぁぁああ゛ぁあ゛ァあッ！゛！」 握力計ったときのこれ好きですwwwwwww (2021年7月17日 14時) (レス) id: 54667db88c (このIDを非表示/違反報告)
豆の字(プロフ) - 真白さん» ありがとうございます！！確かにぶりっ子の言動を見ていると、自分にも思い当たる節があったり……なんてことが自分にもあったりしました（笑）「ぶりっ子のふり見て我が振り直せ」ですね（汗）夏目先輩を好きになってもらえてすごく嬉しいです！ (2021年7月16日 18時) (レス) id: dee9e908a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：豆の字 | 作成日時：2019年9月9日 17時
